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ＪＲ浜松町駅から竹芝方向に歩いて７分、四季専用の３つの劇場が見えてくる。「ライオンキング」がロングラン中の四季劇場「春」、「ウェストサイド物語」を上演中の「秋」、そして三島由紀夫の名作「鹿鳴館」を再演中の自由劇場。ミュージカル劇団のイメージが強い四季だが、ストレートプレイも創立以来の大きな財産である。 俳優座から昨年３月に四季に正式入団した中野今日子は「鹿鳴館」に出演している。桐朋短大演劇科から俳優座に入団。中堅として数々の舞台で活躍したが、もどかしさを感じていた。 「俳優座ではいい役ももらってお世話になってきたけれど、どうしても女優は役が少ない。公演も年に５〜６回で、公演日数も東京公演だと約二週間と短かった」。ここ数年、中野が舞台に立てるのは外部出演などを除けば、年に２本ほどだった。「『私は女優です』といえる期間が短いんです。女優として現役でいられるのもあと２０年くらいしかないと考えたら、焦る気持ちになってしまって」。 そんな時に、四季のオーディションを知った。０４年「ひばり」で王妃の役で初出演した。せりふもほとんどない役だったが、舞台に立てるだけで幸せだった。「舞台をやりたくて、この世界に入ったんですから」。そして、安定したギャラがうれしかった。大手劇団といえども、舞台だけで生活できるのはほとんどいない。ベテランでもコンビニでバイトしたり、水商売など深夜に働く人も多かった。中野もナレーションなどの仕事で生活費を得ていた。「舞台で生活できるのが夢だった。それがかなって、今は舞台のことだけに集中できるのが幸せです」。 四季では創立当初から「舞台で生活する」ことを目指し、６５年には完全月給制を実現した。浅利慶太は「四季を旗揚げした時から、どんなことがあっても演劇で生活しようと思っていた。どんな組織も人を使ったら人件費を払うのは常識じゃないでしょうか」と言い切る。現在、出演しているステージ数に応じてギャランティされており、準主役クラスでは１０００万円を超す人も多い。ステージに出ていない海外からの研修生にも月２０万円を保証し、心置きなくレッスンに集中できる体制が整備されている。 現在、俳優座のほかにも劇団民芸、文学座、劇団昴から２０人以上の俳優が参加している。１０月に上演されていた「この生命誰のもの」では民芸、文学座、俳優座、昴の俳優がそろい、さながら新劇合同公演のようだった。 中野は四季の劇団員になってから「ミュージカル異国の丘」「解ってたまるか ！」「エクウス」などに立て続けに出演した。舞台に立てば意欲も沸く。今は歌のレッスンにも取り組んでいる。「まだ恥ずかしいんですが、浅利先生から『歌もやっておけ』と言われたので」。女優として新しい挑戦も始まっている。

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