政治ビラ投函、逆転有罪 東京高裁判決 住居侵入罪「成立」
2007年12月12日（水）08:56
ドアポストに共産党のビラを配布する目的で分譲マンションの廊下に無断で入ったとして、住居侵入罪に問われ、１審東京地裁で無罪になった東京都葛飾区の僧侶、荒川庸生被告（６０）の控訴審判決公判が１１日、東京高裁で開かれた。池田修裁判長は住居侵入罪が成立すると判断して１審判決を破棄、罰金５万円（求刑罰金１０万円）の逆転有罪判決を言い渡した。荒川被告は即日、上告した。
池田裁判長はまず、被告が侵入したマンションの玄関ホールに、ビラやパンフレットの投函（とうかん）を禁じる旨の張り紙があった点について検討。「管理組合理事会で決定の上で掲示されており、住民から異論や苦情はなかった」として、住民総意として部外者の無断立ち入りを禁じていたと判断した。
また、張り紙の内容や張り方から「各戸のドアポストへのビラ配布のための立ち入りが予定されていなかったことは明らか。そのことは来訪者にも伝えられていた」と述べ、住居侵入罪が成立すると結論付けた。
荒川被告側は「ビラ配布目的での立ち入りを処罰することは、表現の自由を保障した憲法に違反する」などと無罪を主張していた。
これに対し、池田裁判長は「表現の自由は絶対的に保障されるものではない。思想を外部に発表する手段であっても、他人の財産権を侵害することは許されない」とし、この主張を退けた。
１審判決は、張り紙が政治ビラの投函を明確に禁じていなかった点などを指摘した上で、「マンションの共用部分への立ち入りが、刑事上の違法行為になるという社会通念は確立していない」などと判断。荒川被告を無罪としていた。
判決によると、荒川被告は平成１６年１２月２３日昼すぎ、東京都葛飾区のマンションに無断で侵入。共産党のビラを７階から３階まで各戸のポストに配っていたところを住民に見つかり、現行犯逮捕された。
◇
【用語解説】住居侵入罪
刑法に規定された罪で、正当な理由なく、人の住居に侵入したり、要求を受けたにもかかわらず、退去しなかった場合などに適用される。東京都立川市の自衛隊宿舎に「イラク派兵反対」とのビラを配った３人も、この罪で起訴された。法定刑は３年以下の懲役または１０万円以下の罰金。
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