現在位置:asahi.com>政治>国政> 記事

首相訪中へ日本側苦慮 文書書き換え、中国が訂正拒否

2007年12月12日15時13分

 日中ハイレベル経済対話でまとめた報道文書を中国側が書き換えて公表した問題で、日本側が訂正を求めたことに対し、中国側は応じない考えを示した。福田首相の訪中を控えるだけに、日本側は問題が長期化することは避けたい意向だが、中国側の姿勢次第では相互不信が高まりかねず、対応に苦慮している。

 中国外務省の秦剛副報道局長は11日、「コミュニケは共同文書ではない。内容が一致していないのは正常なことだ」と指摘。中国商務省も同日、コミュニケは「(日中)それぞれが会議の内容を紹介したもの」との声明を発表し、日本側の訂正要求に応じない姿勢を鮮明にした。

 中国では外務省の定例会見を伝えるウェブサイトでさえ、人権擁護や民主化運動への弾圧、台湾問題などをめぐる記述の削除や修正が日常茶飯事だ。日中関係が冷え込んでいた05年3月、温家宝(ウェン・チアパオ)首相が記者会見で日中関係を「最も重要な二国間関係」と述べたにもかかわらず、「重要な二国間関係」と書き換えられたこともあった。

 米中首脳会談では、双方の発表が食い違うのが半ば慣例化しているが、口頭でのやりとりのため、あいまいさが許されてきた側面もある。

 しかし、今回は日本側と閣僚レベルで一度は合意した「文書」を書き換えたことから、問題が顕在化した。中国側は日本メディアの報道を「友好と協力の雰囲気に背く」(秦副局長)とも批判。自国の論理を貫こうとしているが、国際社会における中国の信頼性が損なわれたことは否めない。

 中国外務省は、日本側からの抗議と中国内の強硬論の「板挟み」(外交筋)に陥っているとの見方もある。「ハイレベル対話に参加していなかった中国人民銀行は、外務省や商務省より大きな発言力を誇る」との指摘もあり、中国当局の縦割り体質が書き換えを招いたとの指摘も有力だ。

 一方、日本側は冷静な対応を続ける構えだ。高村外相は11日、記者団に「一緒に発表しようということを決めたんだから、その通りにしてもらいたいなと思っている」と述べた。首脳間交流の促進などで日中関係が改善しつつあるなかで、「騒ぎを大きくするべきではない」(外務省幹部)との思いが強い。

PR情報

このページのトップに戻る