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【主張】イラン核停止報告 制裁を緩める理由はない
米政府が「イランは2003年に核兵器開発を停止していた」とする米情報機関の分析結果報告「国家情報評価」(NIE)を公表した。
イランの核疑惑を理由に制裁圧力政策を進めてきたブッシュ米政権には打撃となり、イランは有利になった−との見方がある。
現にイランのアフマディネジャド大統領は「敵へのとどめの一撃であり、イラン国民の勝利だ」と宣言した。しかし、そうではあるまい。
イランの核疑惑はいまも解消されていない。それどころか、NIEは、03年までは核兵器開発計画が進んでいたことを明示したのである。計画はいつ再開されるかも分からない。
イランには国際原子力機関(IAEA)が指摘してきた数々の核疑惑を進んで解消する義務がある。イランは核拡散防止条約(NPT)の原加盟国でありながら、IAEAの抜き打ち査察を可能にする追加議定書の批准もいまだにしていない。現状では、イランへの制裁を緩める理由はない。
ただ当面、軍事制裁の脅しが効かなくなるのは確かだろう。報告をきっかけに状況の変化が生まれ、外交解決に結びつく展開となれば幸いである。
イランは最近、米国をはじめとする国際社会からの経済制裁もあり、経済が悪化、国民の間に現政権への不満、批判が強まっているという。
今回の報告は、イランの強硬路線見直しへの助け舟ともなり得る。イラン政府はこの機会を逃すべきではない。双方がメンツを失わずに外交解決が図れる好機ととらえるべきだ。
中国の王光亜国連大使は、今回のNIEを受け、追加制裁に改めて慎重な姿勢を見せた。だが、中国やロシアはNIE報告が出る前から制裁に慎重だったことを忘れてはならない。
イランの核疑惑が表面化したのは02年8月だった。そこから国際社会の批判圧力が高まり、NIEによれば、イランは翌03年秋、核兵器開発の停止に追い込まれた。圧力が効果をあげたことの証左ではないか。
今回の報告で、国連安全保障理事会での追加制裁決議の論議に影響を与えるのは必至だろう。しかし、イランは過去2回の国連安保理制裁決議を無視したままだ。イランの信頼回復へ向けた責任は消えていないのである。