最終更新:2007.7.11
- 白内障は水晶体が加齢により濁る病気で視力低下でものがぼけて見えるようになる。
- 白内障には、加齢性(老人性)白内障、アトピー性白内障(目を擦ったり叩いたりしてなる)、糖尿病性白内障、併発性白内障(ぶどう膜炎・緑内障・網膜色素変性症に併発)、ステロイド性白内障、外傷性白内障(ボールが目に当たる)等がある。
- 水晶体の濁り方には、@外側周辺から濁り出す皮質混濁(これが最も多い。通常進行はゆるやか)、A中心から濁る核混濁(水晶体の中央の核が石のように硬くなるので手術は急いだ方がよい)、B水晶体の後ろ側から濁る後嚢下混濁(症状が早くから出て進行も早い)がある。糖尿病性白内障は水晶体の網膜に近い後方から濁り始めるのが特徴で症状の進行が早く、2〜3ヶ月で手術適応になるケースもある。典型的な症状は、物が二重・三重に見えたり、近視がどんどん進み、最後はぼやけてよく見えなくなる。
- 電灯や太陽がまぶしい、かすむ、暗いところで見にくい、近視が進む、コンロの青い火がついているのが分かりにくい、ものが二重・三重に見える、黄白色のフィルターがかかったように見える、遠くの風景の濃淡がはっきりしない等の症状が起きる。白内障の初期の事もあるので眼科受診。軽い白内障が起きると、水晶体での散乱が増えてまぶしく感じるようになる。車などを運転中、対向車のライトがそれまでよりまぶしく感じたり、太陽の光が余計にまぶしく感じるようになる。どんなに調整しても眼鏡があわないようになる。
☆目がかすむ場合:白内障、乱視、老視、緑内障、ぶどう膜炎などで起きるので眼科で鑑別が必要。
- 白内障になれば、メガネを替えても視力は回復しない。
- 加齢による目の老化が一番多い。患者は10万人以上。40歳頃から始まり、50歳代で50%、60歳代で約70%、70歳代では90%、80歳以上になるとほぼ100%の人に白内障が原因の視力低下が起きる。70才以上の白内障の90%は加齢性白内障。一般には白内障の進行は年5〜7%程度。
- 糖尿病、目の外傷、アトピー性皮膚炎、栄養不良、遺伝、放射線や赤外線照射、ステロイド剤・抗精神病薬などの副作用、ブドウ膜炎、網膜剥離や硝子体手術、緑内障手術などでも発症する。
- 糖尿病の人は血糖コントロールをよくして白内障が進まないようにすることが重要。一般に血糖コントロールが悪いと進行が早くなるが、血糖値がわずかに高い程度でも進行が早い人がいる。
- 通常視力の低下は緩慢だが、急に視力が低下するときは別の病気がないか確認して貰うこと。
- 白内障が進んで水晶体が完全に濁り、視力が0.1以下の成熟白内障の段階になると、水晶体が膨らんで眼圧が亢進し、急性緑内障を起こすことがあるので眼科を受診すること
- 糖尿病性網膜症の人では白内障の手術後に網膜症が悪化する事があるので定期検診を怠ってはならない。また左右同時手術は出来るだけ避け、片方の目が落ち着くのを待って(数ヶ月)、もう一方を手術するのがよい。
- 白内障の検査に使われる散瞳薬の副作用で眼圧が上がり緑内障を発症することがあるので眼圧が上がりやすい目の構造かどうかをよく見て貰う。
- 角膜の内皮細胞が減っているかどうかを検査して、減っている人は、手術を見合わせるか、手術を遅らせるか、手術法を考慮するか、角膜移植と同時に手術するか等を眼科と相談する。
- 車を運転する人は単焦点眼内レンズを使用するのが主流(多焦点レンズではピントが甘いので危険)
- 手術を先送りしすぎると、超音波吸引の時間が長くなって、角膜内皮細胞や虹彩の術後の炎症が強くなる。また、水晶体が固くなって手術が難しくなるので、タイミングについては眼科医とよく相談しよう。
- 手術後はUVカットの眼内レンズやイエローレンズを挿入し紫外線の害を軽減するようにしたい。
- 日常生活に支障が出れば手術。まぶしい、運転免許証を取得する0.7の視力がない等。 一般的には矯正視力が0.5〜0.6以下になった時が手術のタイミング。片目だけの白内障の人は手術をあまり急ぐ必要はないが、左右の視力が著しく異なる「不同視」の場合で、日常生活に苦痛がある場合は早めても良い。
- 眼内レンズの選択のために、@角膜のカーブを調べる、A目の長さを測る事などが行われ、どの程度の度数のレンズを入れるかが決められる。
- 手術は人工レンズを挿入する。年間80万眼の手術が行われている。最近は日帰り手術が主流になってきた。但し、病院によって若干変わるが、概ね、手術後、翌日、3日目、1週間後、以降は2週間毎に3ヶ月程度まで経過観察で通院する必要があるので、一時間以上かかる遠方の病院での手術は不便なので避けた方が良い。特に、冬場は体調を崩しやすいので電車などを使っての通院は避けた方が無難。一般には70才以上の人は入院手術が安心。
- 手術すれば見違えるように明るく見えるようになる。但し、単焦点の人工水晶体はピントを合わせることが出来ないので、どの部分を一番良く見るかでレンズを決め、それ以外は眼鏡で調整する。車を運転する場合、視力が0.7以下になると免許更新が出来ないので、その時点が手術の時期になる。視力が良い場合の手術時期の決定には「コントラスト感度」を測定する。
- 眼内レンズには従来の単焦点レンズ(どこにピントを合わせるかが重要になるので、その人の行動により決められる)の他に多焦点レンズも使われるようになってきた。近場がよく見える、遠くがよく見える、その中間等ライフスタイルにより眼内レンズを選択する。それ以外は眼鏡で調整する。遠近共に見える多焦点レンズの場合、メガネは不要だがピントは多少甘くなる。一方、単焦点レンズではピントを合わせた距離以外ではメガネが必要になる。
- 手術は「超音波水晶体乳化吸引術」と「眼内レンズ挿入術」が推奨されている。小切開し折り畳み式の眼内レンズを使用。
- 手術前の検査:白内障以外の病気がないかを調べるため色々な検査が行われる。
@視野検査:緑内障など他の眼の病気の合併を調べる
A角膜内皮細胞検査:角膜内皮細胞の数が少ない場合(800個以下)は手術を見合わせる事もある
B超音波眼軸検査やレーザー眼軸検査:眼内レンズの正確な度数を決める
C光干渉断層計:他の疾患の有無を調べる
- 手術をするときには医師がどの術式を行うか確認する事である。概して新しい術式ほど良い成果が得られる。技術改良は絶えず行われるから、余程生活に支障が無い限り手術を急ぐ事はない。
- 手術当日には、眼帯保護で歩行可能、通常3日間は眼帯を着用し4日目に眼帯を取る、視力が回復する、1〜4週間:傷口が治り視力が安定する、1ヶ月後:眼鏡を作り、点眼も中止する。手術後3日間が一番大事。手術後数日は入浴・洗顔・洗髪は控え、力仕事、車の運転、セックス、飲酒などは避ける方が無難。(全て患者の目の状態と医師の指示による。翌日から入浴・洗髪・洗顔・飲酒を許可する医師もいる)また、手術後1-2ヶ月は目を擦らない、目を圧迫しない、目にゴミが入らないようにする、激しい運動をしない等の注意が必要。
- 手術後は、細菌感染や炎症、眼圧の上昇の有無、眼内レンズのずれがないかを診察して貰う。特に、手術直後は目の充血、異物感、まぶしさ、涙が出る等が起こりやすいが、ずきずきするような目の痛みなど異常を感じたら放置せず眼科を受診するのが良い。このためにもすぐに通院できる程度の近くの病院が良い。手術後は決められた内服薬を服用し、点眼薬も決められた回数を守って点眼する。点眼する前には、手を石鹸で良く洗うこと。
- 手術後特に注意することは、目を擦らない事、指示された目薬をきちんと点眼すること、眼帯を指示された期間着用すること、目に水が入らないようにすること、力が加わるような動作を避けること等がある。
- 手術後の副作用として、「後発白内障」が出ればヤグレーザーで簡単に濁りを除去出来る。後発白内障は昔は30%程度起こっていたが、最近は眼内レンズの改良で頻度は1〜10%程度に減った。
- 三井記念病院の2003年度の白内障総手術件数4,836件は日本一で、世界でも最多クラス。三井記念病院では独自の「核分割手術」(特殊な小型ピンセット状の装置で核を細分割するプレチョップ法を超音波で砕く前に実施する)により超音波乳化吸引時間は、従来の方法の10%程度にまで短縮され手術時間は4-6分間と言われる。現在半数以上の人が日帰り手術を受けているとのこと。特に赤星隆幸眼科部長(1957年生まれ50歳)の手術は約3-5分。1日の手術人数は40人にも達する。年間手術件数6000件。手術の傷口は1.8〜2MM程度。通常、出血のない黒目(角膜)を切開する。麻酔は点眼薬のみ。三井記念病院では日帰り手術の他、3泊4日の入院で両眼(初日に片目、翌日に片目)の手術もある。
- 超音波乳化吸引法:超音波振動子(細いストロー状の装置)で水晶体の混濁した水晶体の実質(核)を細かく砕いて乳化して洗い取りながら全体の水晶体核を取り出し、水晶体皮質を洗い取ってしまう。その後に眼内レンズを残っている水晶体カプセルの中に入れることで終了する。通常、白内障の手術は約10-20分。
- 手術費用は水晶体摘出と眼内レンズ挿入などを含めて、30%負担の人で、日帰りの場合自己負担額は約45,000円、入院の場合は70,000-80,000円程度。(個室料は別)
- 白内障の手術の安全性は確立しているとはいえ、どの眼科でも100%うまくいくとは限らない。やはり医師の技術によるところが大きいので手術件数や評判を確認して手術する病院を選択したい。白内障の手術後、視力が安定する時期にメガネを作ることになるので、眼科の近くの眼鏡屋に評判を聞けば医師の技術レベルがある程度分かるので参考にしたい。
- 眼鏡については、手術部位や眼の状態が安定してから医師の指示により作る事になるが、通常約1ヶ月近く待つ事になる。目の状態が安定しない内にあまり早く作ると度数が変わってしまい、作り直さなければならない事もあるので慌てないのが良い。
- 従来から軽度の白内障の進行防止に目薬(カリーユニ等)が使われたが、最近の研究では効果が認められないとして、厚生労働省は使用を控えるよう発表している。
- 紫外線(UV)に注意。紫外線は角膜と水晶体に吸収される。
- スキーなどの際には紫外線防止策を講じる。(雪目等で突然痛みが出たら応急処置として目を閉じ圧迫して冷やす)
- 外ではサングラスを着用する。
- ビタミンE、ビタミンC、βカロチンが良いと言われている。特にビタミンCは1日200mg以上摂取していると発症のリスクが40%減るとの研究報告が厚生労働省研究班から2007年発表されている。(日本人の平均的ビタミンC摂取量は1日110mgと言われる)。
- たばこ、酒の飲み過ぎ、ステロイド剤の使用、野菜不足などは白内障を促進させるので注意する。
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更新履歴:2001.8.14/2002.6.23/2003.7.21/2004.12.24/2006.12.9/2007.7.11
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