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曽野綾子さんの『あまりにも巨きい罪な誤読』(2)

2007/11/22 00:16

 

http://ni0615.iza.ne.jp/blog/entry/397234/のつづき

2、曽野綾子氏による誤読の上に立ち上げたバベルの塔


徳永信一弁護士は、『あまりにも巨きい罪の巨塊(あるいは巨魁)』を、最大の名誉毀損用語だと断じて、法廷文書にこれでもかこれでもか、と繰り返し書いた。そのため、原告側準備書面の字数はいつも、被告側のそれの数倍にもなったそうだ。http://blog.zaq.ne.jp/osjes/


  しかし、こういう風評をもとに「罪の巨魁」という神の視点に立って断罪した人もいたのです。それはまさに人間の立場を超えたリンチでありました。 (原告準備書面(1)要旨) 
  被告大江が「罪の巨塊」と呼び、発令者である赤松元隊長が「アイヒマン」になぞらえられた「自決命令」とは、(原告準備書面(3)全文)
  よって《赤松命令説》に基づき赤松元隊長を「罪の巨塊」を犯した極悪人として描いた本件書籍三『沖縄ノート』は、(原告準備書面(4)全文)
  続いて、曽野綾子氏をして「神の視点にたって人の罪を裁く人間の立場を超えたリンチ」であるとの痛切な批判をいわしめた「あまりに巨きい罪の巨塊」という表現(原告準備書面(6)要旨) 
  ましてや、曽野綾子が「人間の立場を超えたリンチ」と評したほどの凄まじい人格非難の言葉(「罪の巨塊」「屠殺者」「戦争犯罪者」「アイヒマン」等)を連ねることを(原告準備書面(8)全文) 
  その事実を以て「罪の巨塊」「屠殺者」「戦争犯罪者」「アイヒマン」等と最大限の人格非難していることが正当化できるのか考えてみるべきである。(原告準備書面(8)全文) 
  曽野綾子が「人間の立場を超えたリンチ」と評したほどの凄まじい人格非難の言葉(「罪の巨塊」「屠殺者」「戦争犯罪者」「アイヒマン」等)を連ねることを正当化できるほどの(原告準備書面(8)全文) 
  『沖縄ノート』における赤松隊長らに対する人格非難は、『ある神話の背景』の著者である曽野綾子をして「『罪の巨塊』などと神の視点に立って断罪したことは、人間の立場を越えたリンチである」(甲B3)と言わしめるほどの激烈なものである。(原告準備書面(8)全文) 


すぐに気づくことは、曽野綾子氏からの引用だという事だ。すなわち、名誉毀損告発の根拠は曽野綾子氏の論述にドンダケ頼っているか、ということだ。 


 

では、その曽野綾子氏が書いた大元の書とはどのようなものだろうか。

もちろんその第一は、原告側が正典とも仰ぐ『ある神話の背景』初出1973年 (復刻版『集団自決の真実』)である。 

大江健三郎氏は『沖縄ノート』の中で次のように書いている。 
 「慶良間の集団自決の責任者も、そのような自己欺瞞と他者への欺瞞の試みを、たえずくりかえしてきたということだろう。人間としてそれをつぐなうには、あまりにも巨きい罪の巨魂のまえで……(後略)」 
このような断定は私にはできぬ強いものである。「巨きい罪の巨魂」という最大級の告発の形を使うことは、私には、二つの理由から不可能である。第一に、一市民として、私はそれほどの確実さで事実の認定をすることができない。なぜなら私はそこにいあわせなかつたからである。第二に、人間として、私は、他人の心理、ことに「罪」をそれほどの明確さで証明することができない。なぜなら、私は神ではないからである。 (『ある神話の背景』(『集団自決の真実』に改題)ワック) 

そしてもう一つは、平成12年(2000年)10月の司法制度改革審議会における曽野発言である。

地元の一人の新聞記者から「赤松神話はこれで覆されたということになりますが」と言われたので、私は「私は一度も赤松氏がついぞ自決命令を出さなかった、と言ってはいません。ただ今日までのところ、その証拠は出てきていない、と言うだけのことです。明日にも島の洞窟から、命令を書いた紙が出てくるかもしれないではないですか」と答えたのを覚えています。しかしこういう風評を元に「罪の巨塊」だと神の視点に立って断罪した人もいたのですから、それはまさに人間の立場を越えたリンチでありました。  

このように、曽野綾子氏は30年以上にわたって、誤読を繰り返し増幅しつづけてきたのである。そして、その『努力』が、今回の裁判として結実したといっても過言ではない。 


これから先は、文藝評論家=山崎行太郎さんの論考に委ねよう。 

曽野綾子の「誤読」から始まった。大江健三郎の『沖縄ノート』裁判をめぐる悲喜劇。 
http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20071118/p1

より 
 

大江健三郎の『沖縄ノート』をめぐる名誉毀損裁判で、被告の大江健三郎自身が大阪地裁に出廷し、かなり詳細な証言をしたことから、特に保守陣営側から、証言内容はそっちのけの、大江健三郎に対する激しい批判と罵倒が新聞やネットに氾濫したわけだが、驚くべきことに、と言うか、当然と言えば当然のことにと言おうか、大江健三郎批判や罵倒を繰り返す人たちが、揃いもそろって、問題の本、つまり大江健三郎の『沖縄ノート』は言うまでもなく曽野綾子『ある神話の背景』(『集団自決の真実』に改題)さえも、二冊とも本屋に行けばいつでも手に入るにも関わらず、ろくに読まずに、マスコミ情報やネット情報を元に、大江健三郎批判や罵倒を繰り返していることがわかり、いささかシラケルと同時に、あらためて最近の保守論壇や保守思想、ネット右翼のあまりの無知無学、思想的レベルの低さに愕然とし、同時に爆笑したわけだが、そういう必読文献とも言うべき問題の本も読まず、関連資料を点検することもない、無知無学だけが自慢の人たちによる幼稚・稚拙な大江健三郎批判や罵倒の起源が、『沖縄ノート』裁判の仕掛け人の一人である曽野綾子の『沖縄ノート』への「誤読」に由来することは、余り知られていないようなので、ここに、実証主義的手続きの下に(笑)、論証しておくことにしよう。さて、「SAPIO」という雑誌をご存知だろうか。小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』が連載されている雑誌と言えばお分かりだろうか。まあ、雑誌の名前などはどうでもいいのだが、その、「SAPIO」という雑誌に、曽野綾子が登場し、これまた無知無学を絵に描いたような池田信夫とかいう御仁を相手に、「誤字」「誤読」に基づく間違いだらけの「集団自決問題の真実」とやらを、あたかもこの問題の権威者であるかのごとく、まさか、作家としては恥ずべき、自分の初歩的な「誤読」からすべては始まったなどとは夢にも思うことなく、それ故に、恥も外聞もなく、堂々たる態度で、傲岸不遜、自信満々に、ご披露している。たとえば、池田信夫を相手に曽野綾子曰く、

  

  決定的だったのは、大江健三郎氏がこの年刊行された著書『沖縄ノート』で、赤松隊長は「あまりに巨きい罪の巨魁」だと表現なさったんです。私は小さい時、不幸な家庭に育ったものですから、人を憎んだりする気持ちは結構知っていましたが、人を「罪の巨魁」と思ったことはない。だから罪の巨魁という人がいるのなら絶対見に行かなきゃいけないと思ったのです。 (「SAPIO」2007/11/28) 
この発言から、曽野綾子が、大江健三郎の『沖縄ノート』の何処の、何に、拘っているかがわかるだろう。つまり曽野綾子は、『沖縄ノート』の中の「罪の巨塊(罪の巨魁)」という記述部分に拘っているのである。しかし、ここに、曽野綾子の作家としては致命的とも言うべき、とんでもない誤読、誤解がある。前の記事でも書いたように、曽野綾子は、大江健三郎が「罪の巨塊」と書いた記述を、「罪の巨魁」と誤読した上に、さらに意味をも誤解している。幼稚園レベルの誤字と誤読、誤解…。ここから全ては始まっている。つまり曽野綾子は、「罪の巨魁」(人間?)と解釈しているが、大江健三郎の『沖縄ノート』の記述は、「罪の巨塊」(物?)である。つまり、大江健三郎は、「罪の巨塊」という言葉で、「罪の巨魁という人」と言いたいわけではなく、文字通り「罪の巨大な塊」と言いたいわけで、「罪の巨塊」という言葉を、曽野綾子のように「罪の巨魁という人」と解釈することは出来ないどころか、曽野綾子の発言は、まったくの誤解、誤読に基づく妄言ということになる。だから、「罪の巨魁という人がいるのなら絶対見に行かなきゃいけないと思ったのです。」というのも、まったくの誤読に誤読を重ねた上での、謝った解釈に基づくデタラメ発言ということになる。では、大江健三郎の『沖縄ノート』の記述は、そもそも、どうなっているだろうか。

 

(以下略→ http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20071118/p1) 


大江氏陳述による指摘


あまりに巨きな罪の巨塊」と書いたことについて、曽野綾子氏は、大江氏が赤松隊長を大悪人であると非難していると、『ある神話の背景』の中で書き、それを原告が訴訟で引用しているが、まったくの誤読である。


集団自決により死んだ多数の島民のことを「巨塊」(おおきなかたまり)といっているのであり、隊長のことを「巨魁」(悪人)といったのではない。

こちらも・・・・
誰も読んでいない『沖縄ノート』。
http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20071111/p1


 

 

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2007/11/24 07:37

Commented by fatboyslim さん

やっしゃんです。メールしますた。

 
 
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2007/12/01 16:37

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