(その4からのつづき)
脚注
【※1】 →大阪地裁法廷準備書面(2)
(原告側準備書面の引用部分)
そこで水谷少尉が、
「もうしかたがないから玉砕しよう」と言い出しました。
私達女性は、しばらくすみの方にちぢこまって「きょうまでの命か」と思いつつ戦闘の様子を伺っていましたが兵隊さんたちが玉砕するというのを聞いて、
「私もお願いします。私も」と我れ先に、伏せている兵隊さんたちにおおいかぶさる格好でとびついていきました。ケガした長谷川少尉は、傷が痛みだしたらしく、早く死んで、楽になりたいといった様子です。それを、
「がまんして下さい。兵隊さんたちだけ死ぬような事をしないで、私達も一緒に死なせて下さい」と女の人たちは頼みました。
「これだけ大ぜいいては、手りゅう弾一個では全員死ねないな」とどうして死んだらいいか打ち合わせている所へ、米兵からガス弾が投げこまれてきたのです。急に白い煙がたちはじめたので、兵隊さんたちが、
「ガスだ、ガスだ」
と叫びました。すぐさま、むしろなどをもってガスをあおぎたてながら兵隊さんの毛布を大急ぎでかぶりましたが、急に目がみえなくなり始め、のどがかわき、息苦しくなってきました。その時兵隊さんたちは、
「今のうちだ、自決しよう」
とあわてましたが、どういう心変わりか、水谷少尉は今度は、
「自分が命令を下すまでは絶対に自決をしてはいけない」
といいました。水谷少尉は防毒マスクをかけていながらも非常に苦しそうでした。
(原告側準備書面引用おわり)
【※2】「特幹隊」が正しい。特幹隊とは特攻任務の海上挺進隊のこと。隊員の殆どが特別幹部候補生だから「特幹隊」という。もしかすると村の人たちは「特攻」のことを「突貫」と言ってたかもしれない。他に文中には「整備隊」がある。基地建設と守備の「基地整備隊」が、海上挺進隊とともに座間味には駐屯しており、米軍上陸時には両方をあわせて梅澤裕少佐が最高指揮官であった。
【※3】朝鮮人、男性なら基地建設の軍夫、女性なら従軍慰安婦。当時、慰安婦は慶良間4島に7人ずつ配置されていた。梅澤裕少佐も怪我をして朝鮮人慰安婦の看護を受けているところを米軍捕虜となったとされている。
【※4】大型発動機船。
(以上)
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