つかのまの愛
『沖縄ノート』の中に、”つかのまの愛”という表現がある。大江さんの典拠は銘記されてないが何か1970年当時の報道なのだろうか。
参考になるか、まず沖縄史の専門家である林博史さんのサイトから・・・
第二に指摘しておきたいことは沖縄戦との関係である。四人の体験に関わっている部隊は独立混成第四旅団の独立歩兵第一四大隊と見られる。この独立混成第四旅団は一九四三年六月に編成替えがなされて第六二師団(石部隊)の歩兵第六三旅団となり、引き続き山西省に駐留した。さらに北支の河南(京漢)作戦に参加した後、一九四四年八月沖縄に移動し、第三二軍のもとで沖縄防衛の任務についた。旅団は首里北方の浦添、西原、宜野湾などに配備され、上陸してきた米軍と四五年四~五月にかけて激戦を重ね大打撃を受けた。そして旅団司令部や各独立歩兵大隊本部は六月二〇日前後に沖縄本島南部で最後の斬り込みを敢行しほぼ全滅した。
この第六二師団の会報『石兵団会報』(防衛研究所図書館所蔵)には日本軍将兵による沖縄住民に対する性的非行などの記事がたくさん掲載されている。そのいくつかを紹介しよう。「姦奪ハ軍人ノ威信ヲ失墜シ民心離反若クハ反軍思想誘発ノ有力ナル素因トナルハ過去ノ苦キ経験ノ示ス所ナリ(中略)掠奪乃至強姦ノ域ニ達セズト雖モ之ニ近似セル所為ノミニテ軍ニ対スル反感ヲ醸成スルニ至ルベシ 且一部地域ニハ貞操観念弛緩シアル所アリ 之ガ誘惑ニ乗ゼラレ不知不識ノ間、猥褻姦通略取誘拐住居侵入等ノ犯罪ヲ犯スコトナカラシムルコト」「本島ニ於テモ強姦罪多クナリアリ 厳罰ニ処スルヲ以テ一兵ニ至迄指導教育ノコト」(第四九号、一九四四年九月七日)
「空襲後那覇宿営部隊ハ各々空家ニ宿営シアルモ無断借用シ或ハ釘付セル戸ヲ引脱シ使用シアリ 又家中ノ物品ヲ勝手ニ持出シ使用シアル部隊アリ 民間ニオイテハ『占領地ニ非ズ無断立入リヲ禁ズ』等ノ立札ヲ掲ゲアリ 注意ヲ要ス」「性的非行ノ発生ニ鑑ミ各隊此種犯行ハ厳ニ取締ラレ度」(第七九号、同年一〇月二六日)
こうした非行は第六二師団によるものだけではないが、沖縄に駐留していた日本兵による強姦や略奪などが頻発し、軍上層はくりかえし警告を発せざるをえなかった様子が伺われる。もちろん沖縄では女性を拉致するなどの行為はおこなわれなかったが、沖縄での日本軍のそうした乱暴な行為の背景に中国戦線での経験があったことは否定できないだろう。
http://www32.ocn.ne.jp/~modernh/paper05.htm
※62師団
1970年の『沖縄ノート』に遅れて、佐木隆三氏は別事例だろうが同じ62師団のことを、『沖縄住民虐殺』1976年で書いている。
敵にむけるはずであった武器をさかさまに持ちかえておこなった強姦
Odさんの証言・・・10・10空襲のあと
「(中略)
伊是名から帰ったのも、わしも日本人として恥ずかしくない行動をとろうと思ったからだが、家が焼けて母親は死んでおる。噂では十・十空襲の前の晩、軍は牛鳥司令官の音頭で波の上で大宴会をやってドンチャン騒ぎをやらかして、空襲の朝はみんな二日酔いだったんだ。くそったれ、とわしは思うたね。
兵隊たちを見ると、これがどうだ。軍物資を持ち出せる立場の者が、それで女を"買う"んだよ。商売女じゃない、後家やら娘やら追い回して、断わられたら強姦しよる。アメリカ兵じゃない、その前の日本兵だよ。わしは思うんだが、友軍の連中は、朝鮮とか台湾へ進駐したときと同じ気分で、植民地の人間みたいに沖縄人を見ておったんだな。
わしは防衛隊に召集されて、ギリギリの年齢だったからね。これはばからしい、ぜったい逃げてやると思ったんだ。わしがしなけれぱならんのは、妻子を守ることだけだ、ほかは知るもんか。そうだろう? 結果的に沖縄は、本土防衛に利用された。敵をなるべくここへ引きつけておくためにね。そして戦争の最中には、沖縄人は友軍のタマよけにされたんだ。友軍の正体が、わしには見えておったんだ」(沖縄住民虐殺p24)
・・・南部へ逃げ回って
西原村i南風原村-大里村-具志頭村と逃げまどい、六月の初めには真壁村(現在は糸満市)にある与座岳中腹の洞窟にたどりついた。与座岳は一六八メートル。ハブが多い山で、ふだんは人が近づかないところだった。
「そんなハブなんか、もうこわくないさ。わしらの洞窟には、初め二十二名だった。雨が降ると、どんどん水が流れこむ。みんな中腰にしゃがんで、息を殺すだけさ。わしは男でいちばん若かったから、自然にリーダーみたいになっていた。……友軍が逃げてくるまではな。兵隊がきたら、もうだめだよ。助け合っていた沖縄人同士、ばらばらにされてしまう。なんでも命令するんだよ、あいつらは。わしは、イモ掘りにやらされたよ、しょっちゅう。女房子どものために生命がけで掘ってきて、だれの口に入る? まず兵隊が奪うんだ。
具志頭では、赤ん坊がたくさん殺されたよね。子ども負ぶっている若い母親だけを集めて、栄養つけるといって注射してさ、なにが栄養なもんか、毒殺だよ。そして母親を、タマ運びやら炊事婦やら使っている。こんなことまでいいたくないけどね、なかには慰安婦同様に使われた母親だっている。鬼畜米英と教えこんでよ、アメリカ兵につかまったら女は片っぱしから強姦される、クロンポは赤ん坊を食いたがっている、なんて脅しておきながらよ。赤ん坊を殺して母親をそんな目にあわせて、なにが友軍なもんか。はっきりいって、わしはアメリカ軍より、日本軍のほうがシャクにさわる」(沖縄住民虐殺p27)
by ni0615
教科書が教えない歴史(1)恣…