軽便の愛称で親しまれた西大寺鉄道の小さな機関車や客車が懐かしい。岡山市の旭東公民館の写真展(二十二日まで)をのぞいた。
西大寺鉄道は、レール幅が九一四ミリとJRより狭い小ぶりの鉄道だ。創業時から戦後まで使われたドイツ製SL、ガソリンや軽油で走った気動車などの写真や模型が並ぶ。田んぼの中をゴトゴトと走っていた気動車なら幼いころに見た記憶がある。
一九一一年に観音(後に西大寺市)―長岡(財田)間で開業した。四年後に後楽園まで開通し、延長一一・五キロを約三十分で走った。六二年に赤穂線が全通したのに伴って廃線となった。
乗客の自転車をデッキに積めたのが、ローカル線の便利なところだった。一年に一回、会陽の夜は大活躍した。大増発して、客車の屋根まであふれる乗客をさばいた。四二年には八万人を運んだ記録が残っている。
住民に愛された軽便だが、廃線から四十年以上が経過し、当時の記憶は薄れがちだ。そこで関係の深い岡山市の公民館四館が開業百周年に向け調査を始めたところだ。貴重な映像や住民の思い出話などを期待している。
岡山県内には西大寺鉄道のように消えていった鉄道がたくさんある。住民の暮らしと密接に結びついていたローカル線の廃線跡を歩くと、地域の栄枯盛衰に出合うことがある。新たな歴史の掘り起こしにつながるだろう。