ブッシュ米大統領は信用力の低い個人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題に対応するため、金融業界と連携して住宅差し押さえの恐れのある最大約百二十万世帯を対象に返済金利上昇の五年間凍結などを盛り込んだ借り手救済の包括的対策を公表した。
問題の広がりを深刻に受け止め対策を講じることは評価できよう。だが、金融市場の混乱や個人消費、企業活動の減退を断ち切ることができるのか不透明だ。今後の動向を注視しなければならない。
米国ではカード支払いの延滞歴があるなど信用力の低い人に融資した住宅ローンの焦げ付きが多発、社会問題化した。当初返済額は少ないが二、三年後に金利が上昇するケースが多く返済不能に陥りやすい。この問題は一方で、証券会社などがローン債権を組み込んで世界中に販売した金融商品の価格が暴落、金融機関が多額の損失を計上し株価が下落するなど世界金融市場の混乱要因になっている。
米政府が小さな政府を掲げる共和党内部の異論を押し切る形で対策を打ち出した背景にはもう問題を放置できないのと、大統領選を前に危機を回避しておきたいとの政治的思惑も絡んでいよう。
対策のポイントは、当初返済額なら払えるが、金利上昇後は返済できない借り手が対象だ。返済能力に応じて五年間の金利凍結や支払い可能なローンへの借り換えを促す。何とか金利上昇を遅らせ、住宅差し押さえを減らしたいとの考えがにじみ出ている。
しかし、どの程度効果があるかを見極めるのは難しいと言わざるを得ない。今後二年で金利上昇を迎える借り手は約百八十万人で、当初金利すら払えない約六十万人は金利凍結の対象外だ。残り百二十万人のうち実際に凍結の恩恵を受けるのは二十万―三十万人との見方もある。この規模で危機連鎖を断ち切ることができるのか懸念は残る。また五年後の凍結解除時に住宅市場の回復、借り手の支払い能力アップが見込めるわけでもない。一時凍結は問題の先送りと指摘されるゆえんだ。
対策はこのほか、詐欺的な営業をしていた金融機関や住宅金融会社の刑事責任追及、借り換えを促す税制上の優遇策導入に向けた立法化加速などがある。しかし、それで経済失速の回避や金融システムの安定が確保されるとはいえない。ローン債権は証券化され複雑な金融商品に依然組み込まれたままだからだ。米政府と米連邦準備制度理事会(FRB)は警戒を怠らず、公的資金の投入や金利引き下げなど可能な政策手段を総動員しなければならない。
岡山県警が、岡山市の高一男子が中学時代の先輩に暴行を受けた後、自殺したとみられる事件で、別の傷害容疑で逮捕した少年二人を再逮捕した。男子生徒らに対する恐喝、傷害などの容疑だ。
男子生徒は、十一月十六日、自宅で自殺した。全身に無数の傷やあざがあった。県警の調べでは、少年二人は、男子生徒に言い掛かりをつけて現金を脅し取ったほか、十一月十四日未明と、十五日夜から十六日朝にかけ、たばこの火を全身に押し付けるなどし、約一カ月のけがを負わせた疑いが持たれている。
関係者によると、二人は十一月六日ごろ、岡山市内で男子生徒らと出くわし、ジュース代名目で約千八百円を取った。その後、要求をエスカレートさせたという。
児童生徒が自らの命を絶つ事件が全国的に相次ぎ、国はいじめ対策などを強めてきた。岡山県教委も有識者会議「県いじめ対策行動推進会議」を設置し、今年九月にいじめの対応事例などを盛り込んだ提言をまとめた。今回の事件は取り組み強化の中で起きた。社会全体で向き合い、二度と起こさない対策を再構築しなければならない。
学校や家庭、地域の連携が重要であり、継続的な努力も欠かせない。被害に遭っている初期段階でのサインに周囲が敏感になることは大切だ。だが、被害を受けている児童や生徒はだれにも相談せず、隠そうとする傾向も見られる。行政だけでなく民間団体による電話やインターネットの相談窓口も充実したが、もっと利用を呼び掛ける必要があろう。
制度があっても有効に機能しているかの点検が大切だ。すべての子どもに大人たちが守っていることを伝えたい。
(2007年12月11日掲載)