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敵少なく、無難な存在 リベラル色も メドベージェフ氏

2007年12月11日06時23分

 ロシアのプーチン大統領が自らの後継候補に、メドベージェフ第1副首相(42)を選んだ。メドベージェフ氏は、後継候補をめぐって政権有力者間の対立が深まる中では、比較的敵が少ない無難な存在とされていた。また、下院選での一方的な与党への肩入れなど、強権的な政治運営で生じた欧米との関係冷却化を意識し、相対的にリベラル色の強いメドベージェフ氏を選択した側面もある。

 メドベージェフ氏はプーチン政権が発足した00年から大統領府長官などの要職を務める一方で、国営天然ガス独占企業ガスプロムの経営にも強くかかわり、02年からは会長を務めている。

 政権内では、最近も大統領の後継候補にズプコフ首相を推す実力者のセーチン大統領府副長官のグループと、イワノフ第1副首相を推すゾロトフ大統領警護局長のグループとの対立が指摘されていた。セーチン氏とゾロトフ氏は石油大手ユコスの解体など資源産業の再編と国家管理をめぐって対立を続けてきた。

 メドベージェフ氏も資源企業のガスプロムを足場にするものの、この両グループの対立からは一貫して距離を置き、政府内では住宅、教育、保健などの改革実現に力を注いできた。エリツィン前大統領時代から残った財界有力者との関係も良好とされている。

 プーチン氏が今後のロシアの経済発展を重視する立場からも、経済分野の担当歴が豊富なうえ、有力者グループに対しても独自性が保てる存在として、メドベージェフ氏を選んだと見られる。

 さらに、プーチン氏がサンクトペテルブルク市に勤めていた時からの腹心でもある。来年5月の退任後も、下院で圧倒的多数を占める与党「統一ロシア」を足場に影響力を行使するうえでも、気心の知れた存在ということを重視したようだ。

 また、メドベージェフ氏は、政権内の一部に有力なロシア独自の民主主義を強調する「主権民主主義」の考え方に批判的だ。経済の過度の国家統制にも反対の姿勢を見せてきた。大統領と同じ旧ソ連国家保安委員会(KGB)の勤務経験者が多い後継候補の中では、例外的にその勤務歴がない存在でもある。

 経済の成長政策を続けるには良好な対外関係も必要となる。その意味でも、選挙中に欧米との間で高まったロシアの政治の手法や安全保障政策をめぐる対立を調整するうえでも、リベラル色の強い同氏は適役だ。

 一方でロシアのメディアは、クレムリンに近いプーチン氏の支持団体が独自で候補者を出す可能性も指摘している。また、野党共産党のジュガノフ委員長は10日、ロシアとベラルーシが来年に本格的な統合国家の創設で合意し、その大統領にプーチン氏が就く可能性を改めて指摘した。政権側から正式な後継候補が現れても、ロシアの政治体制の今後には、なお不透明な要素も残る。

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