ノロウイルス対策大わらわ――ホテル・病院・老人施設

 
              
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ノロウイルス対策大わらわ――ホテル・病院・老人施設

2007/12/11配信

消毒剤をドアノブなどに吹きかけノロウイルスの対策をする(大阪市阿倍野区の天王寺都ホテル)
消毒剤をドアノブなどに吹きかけノロウイルスの対策をする(大阪市阿倍野区の天王寺都ホテル)

激しい下痢や嘔吐(おうと)を引き起こすノロウイルス――。この感染症が相次ぐ冬場を迎え、年末年始に宴会が集中するホテルや、外来患者が多く集まる病院で感染防止の対策が強化されている。全国的に猛威を振るった昨冬に比べ、今冬の集団感染例は大阪などの近畿地区に限れば今のところ少ない。だがノロウイルスの感染経路などは未解明な部分も多い。専門家は「対策を怠れば瞬く間に被害が広がる」と注意を呼び掛ける。

 「またノロウイルスの季節がやってきた」。こう語る、天王寺都ホテル(大阪市阿倍野区)の柏原裕司総支配人は険しい表情を崩さなかった。

 2005年末のパーティー客の発症から始まった同ホテルでのノロウイルス感染は年明けの宴会客らにも拡大。患者数は284人に上った。発症者の嘔吐物が宴会場のカーペットに付着し、乾燥して空中に漂ったウイルスが感染を広げた原因とみられている。

 ホテルはその後、抜本的な対策に乗り出した。多くの人が触れるドアノブなどの掃除にはノロウイルスを消毒できる塩素系消毒剤の使用を徹底。検査会社によるホテル内の各部署への抜き打ち衛生検査も繰り返した。感染が疑われる体調不良のスタッフを強制的に帰宅させる規則も決めた。

 対策が奏功したのか、06年―07年の冬は集団感染をゼロに封じ込めた。さらに今冬は体内でのノロウイルスの存在を調べる検便検査を全スタッフに広げた。嘔吐物を処理する専用のキットも各部署にそろえた。

 「『もう1度集団感染を起こしたらホテルは閉鎖だ』という覚悟でスタッフ全員が臨んでいる」と柏原総支配人は強調する。

 一方、昨年12月に入院患者3人から看護師6人へと感染が広がった島田病院(大阪府羽曳野市)。発症者の嘔吐物の処理方法が十分ではなかったとみられている。看護師の森下幸子さんは、小麦粉にヨーグルトなどを混ぜた嘔吐物の“ニセモノ”を床やソファに落とし、消毒の方法を学ぶ訓練を考案した。

 今年1月に試験実施したが、12月下旬に再度訓練して徹底する予定だ。森下さんは「多くの外来患者が出入りする病院でノロウイルスの侵入を防ぐことは困難。いかに感染拡大を防ぐかが重要だ」と話す。

 介護老人保健施設の桜の宮苑(大阪市都島区)では、昨年4月に利用者11人が感染。同施設は冬場だけでなく、年間を通して塩素系の消毒剤で施設内を清掃するルールを決め、前回の冬は封じ込めに成功した。

 館内には「免疫力が上がる」ともされるモーツァルトの音楽も流れる。看護師長の林八重子さんは「患者や職員を守るためには何でもやります」と話していた。

●これからがヤマ場

 ノロウイルス感染症は、大流行した昨冬に比べ今冬は今のところ被害が少ないが、12月から発症例は増えており、冬本番のこれからは十分な警戒が必要だ。

 大阪府で集団感染(食中毒を除いた10人以上の感染)した症例と患者数は、05年の9―11月は12件431人、06年同期は194件7003人、今年の同期は11件264人。12月は11日現在で、9件313人に増えている。

 ノロウイルスは人間の腸だけで増殖し、培養する方法がないため感染経路を検証できないなど未解明な部分が多い。天王寺都ホテルの感染経路も「患者に共通するのは宴会場だけだったので推測にすぎない」(大阪市保健所)という。

 生ガキなど二枚貝を食べて感染する恐れもあるが、最も多い感染拡大の原因は「人から人への感染」だ。大阪府立公衆衛生研究所の加瀬哲男ウイルス課長は「12月からがヤマ場。わずかなウイルスでも発病するので感染を防ぐには手洗いの励行などに尽きる」と訴えている。
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