ぼくたちと駐在さんの700日戦争

しかしなんとか隣りに追いつくと瑞穂ちゃん。

「はぁ、はぁ、」

息があがってます。

「先輩？」
「なに？」

「女の子が息づかい荒いと興奮するでしょ〜〜〜〜？」

しねーーーーーよっ！
いや。正確にはするけど、おまえじゃしねーよ！

「いや・・・。なんかさ。高見山の勝利者インタビュー思い出した」。

しかしこの攻撃にさえ、まったくひるむ雰囲気のない瑞穂ちゃん。

「ポプラって〜〜〜〜」
「あ・・・ああ」。

「並べ替えるとラプポって知ってましたぁ？」

いや。知ってるもなにも3文字だから。
バカでもわかる。

「それが？」
「なんかぁ〜〜〜〜。ラブホに似てますね！ぷぷっ！」

「はぁ？」

「先輩と2人でラプポ！ぷぷっ！」

ぷぷっ、じゃねぇよ！


僕は毅然とした態度をとりました。

「君ねぇ。僕のツケで次から次に食ってたろ！」

「え〜〜〜〜。失敬な！あたしはゆかりと行った1度だけですよ〜〜〜〜！」

え？
これは実に意外な回答でした。じゃ、誰が？


やがてポプラ。

僕は瑞穂ちゃんを先に通しました。

「え？先輩先にどうぞ〜〜〜」

先に入ってマスターとの会話に入りたくない・・・。
気分はまったくもっての借金人です。
そもそもこの女から始まったわけなのですが。

「レ、レディファーストさ」。

「ま！先輩ったら！紳士〜〜〜〜〜〜」

　　ボクッ

こいつの張り手はホンモノだ・・・・。
勝利者インタビューも板についてるわけだ。

うわ〜〜〜〜。ポプラの入口。いっぱいいっぱいじゃん。
比較対象物があるとでけ〜〜な〜〜〜。この女。

「こんにちわ〜〜〜〜〜。マスタ〜〜〜〜〜」。

「お。いらっしゃい。みずほちゃん！」

うーん。1度だけと言う割合に顔なじみになってる・・・。

「こ、こんちわ。マスター」。
後ろからこっそりと僕。

「おお！ママチャリくん！借金王！」

余計なお世話だ。

「ひ、ひさしぶりですね」。
「うん。君が来なくなってからカンコ鳥だよ〜」。

「そうなんですか・・・」。

言われてみれば、僕のバイト中は顔見知りの高校生たちでいっぱいでした。

「うん。またバイトしてくんないかな〜」。

「やですよ。バイト代、ぜんぜん入んないんだもん」。

「いや。そう言わず。今残ってる借金分だけでもいいからさ」。

「いくら残ってました？」

「ん〜〜〜〜。現実と可能性どっち？」

まだ分れていたのか・・・。

「じゃ・・・。今日は可能性のほうを・・・」。

「可能性はね・・・」。

なにやら帳面を開くマスター。
ちゃんと書いてあるとこがすごい。

「んー。106,980円・・・かな」。

「なな、なんだってそんな！」

「まぁ。可能性だから」。

でも帳面につけてんだろ？その金額！

「今日はツケにする？」

「いえ。キャッシュです！キャッシュ！」

見ると瑞穂ちゃんは、すでに窓際の席に座っていました。

僕は店の一番奥の席へと移動すると
「瑞穂ちゃん。こっちこっち」。

手招きしました。

「ええ〜〜〜〜〜〜。あたしは窓際好きなのに〜〜〜〜〜〜」。

冗談じゃありません。こいつと一緒に喫茶店いたのが他の生徒にバレたらたいへんです。

「あ・・・。僕は・・・。ほら。日光苦手なんだよ。日光が」。

「え？そうなんですか？」

「うん。東照宮には近寄るなって遺言あるくらいでさ。とにかくこっち来いよ」

「あ〜〜〜ん。”こっち来いよ”の言い方が素敵っ！みずほ、すぐいきます〜〜〜〜」

ぐっ・・・。いまのだけで100ptくらいHP吸い取られてるな・・・。
大丈夫か？僕。

「で？和美がどうしたって？」
さっそく本題に入る僕ですが

マスターが横にまいりまして

「ご注文は？」

「えっと。僕は・・・ブレンドでいいです」。

「はいはい。瑞穂ちゃんは〜。いつものね？」

「はい〜〜〜。マスタ〜〜〜〜」。

いつもので通じるのか？

「君、ホントに僕のツケじゃないんだろうな？」

「え！ちがいますってば！」

「そ、そうか。ならいいけど」。

「でも〜〜〜・・・今日は・・・・？」。

「ああ。ケーキくらいはおごってやるよ」。

「先輩！ごちそうさまです〜〜〜〜」。

くそ！

「先輩ね。あたしたちの学年でも人気ありますよ〜〜〜〜〜」。
「ふうん。そう」。

こいつの言うことが当てになるか。

「で？和美のこと。話してよ」。

「あ〜〜〜。ええ」。

やがて彼女の前に紅茶とケーキとパフェ大盛り。
そして僕の前にブレンドが運ばれて来ました。

「それでね〜〜。和美先輩、あわてて出てったと思ったら〜〜〜」。

話そこから？

「表に出してあったマットにけっつまづいちゃって〜〜〜〜」

はぁ？

「で。転んじゃったんですけど〜〜」

「あ？うん」。

「そのまま回転レシーブ！さすが推薦入学の先輩だ〜〜〜って」。

「あ？」

「みんなで拍手したんです〜〜〜〜〜〜」。

「それで？」

「おしまい」。

僕は瑞穂ちゃんの前のチーズケーキをとりあげると、一口で自分の口につっこみました。

「あ〜〜〜〜〜なにするんですか〜〜〜〜〜〜！」

「ぼべ。ぼんばこぽべけーひおぼへるぱ！ぼべっ！」

「はい？」

なんでこの学年、ジェミーみたいなのばっかなんだ？




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　　　　11章-第22話へつづく→


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