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<おことわり>本日2話連続アップです
「はい。どなたさま?」
出て来た小太りの男。間違いなく店の主人でしょう。意外に若い。40歳くらい?
落ち着け。落ち着け。
ゆき姉のアドバイスです。
「バックリベート?」
「クレジット会社も今や選ばれるほどあるのね。銀行や農協、漁協だってやってるし。そこで民間のクレジット会社は組んでもらった金額と長さによってバックリベートをお店に還元するしかけになってるの」
(これは現在ではほぼ全廃されました)
「へぇ」。
「その金額はすごくって、車屋さんとかなら、それだけで会社が成り立つくらいなのよ」。
「そんなに?」
「ええ。値段はるし、ほとんど割賦でしょ?車とかは」。
「そうですね」。
「ひとつのクレジットから10万とか20万とか・・・。バイク屋さんも車ほどでないにせよ、馬鹿にならないはずだわ」。
一息つくと僕。
森田くんから借りたメガネを片手でおさえながら
「実はご主人・・・。クレジットのことで・・・」。
「クレジット?」
「実は私・・・。クレジット協会からまいりました」。
「クレジット?協会?」
「はい。御社様はJ社とC社とO社、それからN社のクレジットを扱っておられましたよね」。
「え?あ、ああ。それがなにか?」
実はこれは表に貼ってあるシールの受け売りなのですが、かなり効果があったようです。
「はい。特にC社様で組まれたクレジットなんですがね。当方に消費者センターのほうから調査依頼がございまして・・・」。
ただただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、店主は小さなテーブル横にドーナツ椅子を移動させると
「まま、ま、どうぞ」。
そう言いながら、店のカウンターの箱から名刺を持って来ました。
僕は千葉くんの教えの通り、すぐには座らず
「すみません。調査員は名刺を持たされておりませんので、悪しからず・・・」。
「あ?え、ええ。で、なんの調査なんです?」
怪訝な顔をしたご主人。
店の前に停まったクラウンを見て、ただただならぬ雰囲気を悟ったようです。
この頃のクラウンは、「いつかはクラウン」のコピーが一世を風靡しように、今のセルシオなどよりはるかにステータスが高く、普通の人にはまったく縁のない車でした。
今で言うならベンツの600S(一番大きなベンツ)が停まったようなものです。いや、それ以上?
「失礼します」。
僕はアタッシュケースをかかえてドーナツ椅子に腰をおろしました。
そしてケースから小型カセットテープレコーダーをまず出して、録音ボタンをセットしました。
「え!な、なにが始まんです?」
「あ。お気になさらず。ご主人。我々は会話はすべて録音して帰らなくてはならないんです」。
5章でも書きましたが、当時の人たちは録音というものにまったく慣れていませんでした。
それはたいへんな威圧感があったものです。
「因果な仕事でしてね。すみません」。
「あ、い、いえいえ・・・」。
心なしか店主の声は小さくなっています。
よし!いける!
「実は御社様が昨年暮れに組まれたC社のクレジットで・・・えっと・・・」
僕はアタッシュケースに手がいきましたが、自分の手先が少しふるえているのに気づきました。
それは自分でも意外で、また自分でもどうしようもないものでした。
「ナダヨウジ様のご契約なんですけどね?」
「なだ?はぁ。それがなにか」。
意識にない。ということは他にもやっているということは容易に想像がつきました。
「こちらです」。
僕は指先の震えがバレないよう、なるべくすばやくそれを提示しました。
「こちらのお店の控えはございますか?」
「え?ええ。ありますよ」。
店主は、カウンター裏からぶあついフォルダーを用意すると、それをめくり始めました。
「えっと・・・。11月・・・でしたかね」。
「はい。11月8日です」。
「あー、あった!これだ!これ・・・・・・・」。
ここで店主の顔はにわかに曇りました。
「こ、この取引がなにか?」
「はい・・・。実はこの灘様がクレジット金額を支払えなくなったというので、市の消費者センターにご相談されたようなんです」。
「しょ、消費者?」
「ええ。そこからまわって当方に連絡がございまして。それで調べたのですが、2、3、うかがわなくてはならないことが生じまして・・・」
「え!」
ここで店主の顔色が変わりました。
「恐れ入りますが、そちらのお店の控えを拝見してもよろしいですか?」
「え?ええ・・・。かまいませんが」。
もちろんこれは支障がないでしょう。
店の控えは僕の持っているもののコピーなのですから。
が、もちろんそこは言わずに
「おかしいですねぇ。ご主人」。
「え?」
「ご契約者様は18歳になっていますが。こちらの調査ではたしか16歳・・・」。
「え!あ?ああ。そ、そうでしたかね」。
とぼけてる。
「それから保証人様ですが、C社の控えは2名になっているんですよ」。
「え?あ・・・。そ、それは・・・」
「確か、モロボシ・・・キヌコ様・・・・・」。
「え?あ・・・。はい。そ、その子。うちの知り合いだったものですから」。
苦し紛れです。
「いえ。保証人様はいいのですが。この灘さんがお支払いできないとなると・・・。当然、年齢からしてもこの諸星様にお支払いいただくことになると思うんですがね?」
「う・・・・・・・」。
店主は完全に詰まりました。ここでたたみかけるに限ります。
僕の指先はまだ震えがとまっていませんでした。
本日2話連続アップ!続けて11章-第19話お楽しみください→
がんばれ〜、ままちゃり!
>nekobokeちゃん
こっちで一番載り認定!!
ママチャリ。。。可愛い♪
がんばれ〜O(≧▽≦)
れ、連続アップでつか?
ドキドキしていきました。
ドキドキ
って俺がドキドキしてどーする!w
誤字報告です。
ママチャリ君の科白で
「ご主人のお見せは」は「ご主人のお店は」ではないでしょうか。
それと
「
ただただならぬ雰囲気を感じ取ったのか」。ちょっと余計に文字が入っているようです。
PS.それにしてもさすがのママチャリ君もあがるのですね。
それに運転手付きの車で乗り込んでるんだから、バイク屋さんも恐々でしょう!
おお、続きが気になるっ!
って、すぐ読めるのか。(笑)
読んでるこっちまで緊張が伝わる・・。
まけるな、ママチャリ!!
がんばってー
そりゃぁ震えるよ〜。
がんばーーれ
お〜!いい感じジャン(゜_゜)
よんでるこちらも、指が震えてます。
さぁー、次、いってみよー。