ぼくたちと駐在さんの700日戦争

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＜おことわり＞本日決戦につきギャグなしです。許してたもれ。m( _ _)m

西条くんは、一番ときょとんとしていた族に目をつけたようです。

「ハッ!!」

かけ声とともに、相手の足をねらって蹴りつけました。

喧嘩慣れしている彼は、主にキックを多用します。
それはやはり、足の方が打撃力として腕の数倍の威力を持っているのと、リーチの長さの優位性にあります。
普通、キックは、パンチと比べて速度が劣りますが、空手有段者であり、ゆき姉直伝の舞うようなキックは、まさに芸術!!
確実に狙ったところに目にもとまらぬ速度でヒットします!

「うああっ!!!!」

へんな奇声とともに、とたんに地面へと転がる族。

西条くんは特にキックでの関節攻めが得意でした。
骨部分と異なり、関節部は意外なほどにもろく、かつ、はずれても神経が最もむき出されたいわゆる「弁慶の泣き所」に当たります。
暴走族ともなると、腹部などは厚いサラシでガードしているのが普通で、下手をすると剣山などを埋めていることもあるため、腹攻めはタブーなのです。

残った2人は、僕たちのヘッドライトの照らす明かりの中、すっかり萎縮してしまいました。

これを西条くんが見逃すはずもなく、

「カッ!!」

気合い2回。

倒れる2人。

相手が虚をつかれたとはいえ、3人が地面に転がるのに、わずかに数秒。

　　強い!!

地面に転がったところに、全体重をかけたキックを腹部めがけてくらわし、合計わずか6発。

3人はもはや呼吸すら満足にできていないようでした。


孝昭のほうは？

僕は少し気になりました。
いえ。孝昭くんがやられることではなく、やりすぎることです。

心配する間もなく、それからわずかして孝昭くんたち4人がもどってきました。

「あっちは終わったぜ〜〜〜」。

「よし。じゃあ・・・」

と、言いかけた時、道向こうから、数台のバイクのライトがこちらへ向かって来るのが目に入りました。

「援軍到来だな・・・」。
「ああ」。

集合場所なのですから、当然と言えば当然です。

「何台来てる？」

「ん〜〜〜。7台ってとこか？」

「わかった。じゃ、みんなバイクに乗れ」。

僕の合図で、澪ちゃんを乗せている千葉くんが先に、奥へと移動しました。
4台はライトをつけず、エンジンだけをかけました。
こうすることで、相手にとってこちらを少人数に見せかけるのです。

「来たな」。
「うん。意外と少なかったな」。

やがて道沿い、バイクが下ってきました。
彼らは、当初、僕たちを仲間のバイクと勘違いしていたようです。

が。そこに倒れている3人を見つけました。
とたんにバイクを降りるのももどかしく、かけよります。

「なっ！なにがあったんだ!?ああ？」

僕たちは後から来た暴走族メンバーにライトをあてました。

「あいつらかぁ？ザケやがって！」

ここで7人のほとんどが倒れた3人にかけよっていました。
僕たちはそのまま方向を翻しました。

逃がすものかと追いかけてくる7人。
ほとんど全速力です。

「まてこらーーーーっ！」
「逃げれると思ってんのか！てめーら！」

怒り心頭の援軍たち。

が・・・

次の瞬間。

　バオオオオオオオオオオオオオオオオ

一瞬で追いかけて来たすべてのヘッドライトが空を向き、バイクの空回り音だけが高く響きました。

なにしろ集合場所。援軍が来るのは計算内でした。僕たちは、昼のうちに、バイクのバウンドするくらいの溝を掘っておいたのです。
彼らにとってここは根城ですから、目をつぶっても走れる場所でした。
それだけ過信していますから、よもや落とし穴があるとは思ってもみなかったのです。
彼らはものの見事にひかかってくれました。

後から追いかけて来た1人だけがこれに気づき、転びませんでしたが、彼が最も不幸でした。

そうです。言うまでもなく、孝昭くん。石つぶて攻撃!!
さっさと転んでればよかったものを・・・。

数発の石つぶてを浴びたあげくに、最終的に激しく転倒。

　ブウウウウウウウウウウウウウ

7台すべてが地面に転がり、後ろのタイヤだけが空回りしています。

僕たちはこれを確認すると、バイクをUターンさせ、彼らを照らし出しました。
起き上がろうとする者もいますが、その都度に、どこからか飛んで来るすさまじい石つぶての標的となりました。
けして当たったわけでもないのですが、彼らは立ち上がろうとするのをやめました。
身の危険を察知したのでしょう。

僕は西条くんに合図を送りました。

もうご存知かとは思いますが、僕たちは、こういう争いでは、決して名前を言いません。
なにから足がつくかわからないからです。まして有名人「西条」。

西条くんはゆっくりとゆっくりと近づきます。

「な・・・て、てめぇ！な、なにするつもりだ・・・」

「あ？聞かねぇほうが幸せだぞ」

言うやいなや、全員の腹部に正拳突き!!

「ぐおぉっ」

空手有段者の、石さえ割るほどの突きです。サラシをまいていようと耐えられるものではありません。
また、逆に、こうした場合、西条くん以外では、よけいな致命傷を負わせる心配がありました。
特に孝昭くん。それはそれでやっかいなのです。


こうして3名+3名+7名全員を苦もなく倒した僕たちは、決定的追い打ちをかけました。
孝昭くんではありませんが、こういう戦いは徹底していなくてはなりません。

まず、チャーリーたちが、彼らのバイク全部のガソリンを抜きに回りました。
チャーリーはこの時のために、工具を工場から持って来ていました。

「2カ所だぞ」
「ああ。わかってる」

これは、たとえおきあがって復帰しても、追ってこれないようにするためです。
2カ所損傷させるのは、応急処置をさせないため。
ガムテープ程度で直ってもらっては困るのです。

次に

「写真撮れ」

全員のヘルメットをとると、倒れたままの全員の顔写真を撮影しました。

「な・・・・なにもんだ・・・・てめぇら・・・俺らを夜桜連合と知ってか？」

うなるような声で族のひとりがたずねました。
まだ強がる元気があるようです。
孝昭くん。その元気さが気に入らないのか、一発蹴りをくらわすと、襟首をつかみ

「あ？お前ら。総長の氷室に言っとけ！おとしまえはこれだけじゃ済まねぇ、ってな！」

「ひ・・・氷室は総長じゃ・・ねぇ・・・」。

言うまでもなく、そんなこと僕たちもとっくにわかっていました。
しかし

「へ。すっとぼけんなよ！こら。こっちは裏とってんだよ!!」

「ほ・・・・ほん・・とだ・・・ヒムろは・・・」

それは不思議でしょう。
当然ガセです。しかし、彼らをバラバラにするのには、これでじゅうぶんでした。


「さ。行こうかぁ」。
「おお」。

僕たちがいきようようと、立ち去ろうとした・・その時！

後ろから、しんがりの孝昭くんめがけて、突進してくる者がいたのです。
これには僕たちも油断していて、誰ひとり気づきませんでした。

が

「あぶない！うしろ！」

橋の上から声がしました。

その声に気づいた孝昭くん。
振り返り様にその男にパンチをくらわします。
これに久保くん、河野会長も混じり・・・
その後は
もう、見るも無惨というか・・・。
なにもそこまでというか・・・。
どっちが暴走族だっていうか・・・。

男は地面に落ち、ピクリとも動かなくなったのでした。

ふと、上を見て声のしたほうに・・・

暗がりの中、手をふっているレオくんの姿がありました。



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