ぼくたちと駐在さんの700日戦争

くだんの女子高校生は、中をさかんにうかがっているようです。

「あの・・・。西条んちになんか用ですか？」

僕の声に、彼女は、はっと身を固めると
「え・・。さ、西条さん・・のお友達ですか？」

振り向きました。

「ええ。呼びますか？」

「あ。いえ。だ、大丈夫です」。

と言うなり、彼女。

「レオ！わかってんのよ！こっち出てらっしゃい！」

あー。この子が澪ちゃんかぁ・・・・。
目はやたらに大きくクリクリしていて、なるほど。こりゃぁ美人だ。井上んとこの夕子ちゃんといい勝負だ。
なんで西条はいっつもこう、美人に「縁だけ」あるのかなぁ。ほんっと不思議です。

って。まてよ。
洋次がひと目惚れしてる女性って・・・・。


やがて西条宅からわらわらと出て来たのは

「チャーリー、お前も来てたのか？」

「おお。遅かったな。待ちくたびれたぞ」。

そして西条くんと。
噂の中学生、レオくん。

「ね、ね、ねえちゃん!!」
心なしかビビリかたが孝昭くんに似ています。
まさかねぇ。
お欄さんならともかく、こんな可憐な美少女が

「あんた！なに考えてんだよっ！」

お欄さんと同じだ・・・・。

「えっとボクは・・・・」。

「まだ暴走族相手に仕返ししようとか思ってるわけ？いいかげんになさいっ！」

「だって・・・。父ちゃん・・・・」。

澪ちゃん。西条くんをキッと睨みつけると
「西条さんって言いましたっけ。弟にへんなことふきこまないでください！」

「え？俺はなにも・・・・」。

西条くん。気の強い女性が苦手です。

「この子がなに言ったか知らないけど。不良の道にひきこまないで！」

これは聞き捨てなりません。
確かに西条くんは、その並外れた強さから、幾多の戦歴がありますが、それは彼が仕掛けたものではありません。
単に不良たちが仕掛けてきたものなのです。

「君・・・」
僕が言いかけたところで、それより先にチャーリーが興奮して言い放っていました。

「おまえなーーー！」

かなり怒っています。さすが友達思いのチャーリー。

「いいかげんにしろよ！西条はなぁ・・・」

「西条は、確かに乱暴で、スケベでなー、女好きで、おまけでS○好きでなーーー」

「エロ本いっぱい集めてて、そりゃぁ部屋はエロ本図書館みたいになっちゃってるけどなー」

「女の尻ばっかり追っかけてるみたいに見えるけど、いや、実際そうだけどなーーーー！」

かなり興奮しています。
「い、い、いや。チャーリー・・・いいから・・・」。
西条くんの制止を振り切り

「たしかに子供にしかモテねぇし、たまに女とつきあえばすぐフラれるしよーーー」

「頭もそんなによくないし、粗暴で、馬鹿で、デリカシーなくって、どうしようもねえ変態だけど・・・」

ここまで肩で息をするほど興奮してしゃべり続け、
ようやく一息ついて、チャーリー





「お、俺が言いたいのはそれだけだ!!」






いや。それだけだ、って。
まだ一個も褒めてねぇーじゃん！
どうやらチャーリー、興奮しすぎて話にオチをつけるのを忘れたようです。
結局、西条くんの短所並べ立てただけ。
しかもじゅうぶんすぎるほど。

西条くん。
「チャーリー・・・俺・・・生きる自信なくなってきたよ・・・・」。

可哀想に。相当なダメージ受けてます。
なのにチャーリー。

「あ。そうだ！チ○ポでかいぞ!!」。

フォローになってない・・・。しかも女子高生に向かって・・・。


「いや。君、西条のこと誤解してるよ」。

僕がようやく援護射撃をしましたが

「え！今聴いた限りでは、なんの誤解もしてないわ」。

いや。だから、そもそもそこが・・・。
チャーリーのバカ野郎・・・・。

が、ここでレオくん。

「僕、西条先輩に武術ならってたんだ。あいつらに負けないくらい強くなるんだ！」

対して澪ちゃん。
「だから、それが余計だっつーのっ！あんた相手何人だかわかってんの？」

「だから西条先輩が手伝ってくれるって・・・」。

「ほんとなの？」
澪ちゃん。西条くんを睨みつけます。

「あ・・・。ああ。ほんとだ」。

「だったら余計なお世話だわ。弟から父のこと聴いたんだろうけど」。

「あ・・・うん」。

「弟まで父と同じめにあわすつもり？」

「いや。そういうわけじゃねぇんだけどさ」。

「とにかくケンカなんかたくさんよ。今後弟にちょっかい出さないで！」

こりゃぁお欄さんなみのハネっ返りです。

が。レオくん。

「姉ちゃん。僕はやだ。このまんまで気がすむもんか！」

「レオ・・・・・」。

「泣き寝入りなんかゴメンだ！今も真央はひきつけ起こしてる！」

真央・・・赤ちゃんの名前かな・・・。

「僕は戦うんだ！女の姉ちゃんはすっこんでろっ！」

おおおお。
よく言った。なかなかの男だなぁ。レオくん。

と、思ったら澪ちゃん

レオくんの口にいきなり指をつっこんでひっぱると

「姉ちゃんにそういう口きくのは、この口かぁ？え？これか？」

げげ。お欄さんなみ・・・・．

レオくん。口ひっぱられたまま
「おねえひゃま　ごめんなひゃい・・・」。

まったく孝昭姉弟そのもの。

僕がようやく
「あのね。澪ちゃんって言ったっけ？西条はね。君が思ってるような人間じゃない」。

「え・・・」。

と、いうところで孝昭くんがバイクで到着しました。

「おーーー！西条！こないだ借りたドエロ本、返しにきたぞーー！」

一斉に振り向く僕たちに

「あれ？なに？この雰囲気・・・？あれ？なんか・・・俺・・・悪いこと言いました？」





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