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2007年12月11日

◎近江町日曜営業 「地域の台所」の心意気も

 金沢市の近江町市場が、来秋の再開発ビル一部開業に合わせて、日曜営業に乗り出す方 向性が固まった。武蔵地区は、大手スーパーの撤退で商業地としての地盤沈下が懸念されていたが、まちなかへの定住の動きもみられる。そんな中で近江町市場は、観光面だけでなく、市内中心部の住民が日常の買い物をする場としても、ますます貴重な存在になるだろう。「地域の台所」の心意気で、武蔵地区のにぎわい創出に一肌脱いでもらいたい。

 金沢市中心部は、北陸新幹線開業を控え、マンション建設の急増などで、都心回帰の流 れが出てきており、共同住宅の着工は、中心部だけで過去五年で約二千戸に上るという。現在の入居者は熟年層が中心だが、転勤族や学生などへの広がりも見られるようだ。

 そうした、まちなかへの人の流れを中長期的な定住に結びつけるためには、商業地、と りわけ市民の台所として藩政期以来の伝統を誇る近江町市場の活性化が不可欠であろう。

 近江町市場の日曜休業は、もともと卸売市場の休市に合わせた措置だが、現在は、品質 管理の向上などで、鮮度をそれほど損なわずに商品が提供できるようになっている。やがて完成する再開発ビルは、飲食を中心とした新たな店も入居することから、早晩、日曜営業は避けられないと言われていた。

 JR金沢駅前には、昨年秋に「金沢フォーラス」が完成した。「近くて遠い」とも言わ れる駅前と武蔵の両商圏だが、歴史のある近江町市場は、先端のファッション商品を特徴とするフォーラスなどとの違いを際立たせることで、中心部活性化への相乗効果をもたらす重要な位置づけにある。

 先に同市場商店街振興組合が行った意識調査では、回答した事業主の四割が日曜営業に 賛成し、営業すれば客の八割が「買い物に行く」としている。現在、休みでも日曜日に訪れる観光客は少なくないが、日曜営業となれば、観光客のみならず、仕事を持ち、平日に足を運べない地元女性らも、ゆっくり買い物ができるようになるだろう。地域の信頼に裏打ちされた新鮮な食材の対面販売という最大の武器を生かし、日曜日もまちなかに活気をもたらしたい。

◎米軍グアム移転費 常識と透明性の確保を

 沖縄駐留米海兵隊のグアム移転計画に関し、石破茂防衛相が米側の出した家族住宅の建 設見積額を見直す考えを示したのは当然である。在日米軍再編で日本側が負担する経費の総額はまだ明確にされていない。沖縄の基地負担の軽減と米軍の抑止力による日本の安全保障を両立させるために、相応の費用負担は免れないにしても、明確な根拠があり、常識にかなった金額でなければ国民の理解は得られまい。

 米海兵隊のグアム移転や沖縄普天間飛行場の移設などを柱とする米軍再編計画は日米両 政府の合意事項であり、滞りなく実現する責任を政府は負っている。ただ、再編計画の決定に深く関与した守屋武昌前防衛事務次官が収賄容疑で逮捕されたことから、政府は計画決定の過程を再検証する必要にも迫られている。

 米海兵隊のグアム移転で予定される家族住宅や司令部庁舎などの工事入札に関する企業 説明会も既に開かれているが、国民に負担を強いる米軍再編の事業実施にあたって政府は説明責任をしっかり果たし、透明性を確保することが不可欠である。

 日米両政府は昨年、沖縄に駐留する米海兵隊約八千人とその家族約九千人を二〇一四年 までにグアムに移転させることで合意し、米側の概算をベースに移転経費約百二億七千万ドル(約一兆二千二百億円)のうちの59%(約七千二百億円)を日本が負担することでも一致している。

 今年の通常国会で成立した米軍再編推進法で、国際協力銀行がグアム移転を支援するた めに出資や融資を行うことができる仕組みも創設されており、防衛省は二〇一〇年の着工を目指している。

 しかし、米側の住宅建設の見積額は積算根拠が明確に示されておらず、不透明である。 グアムでは住宅一戸が二千万円程度で落札されているとも言われ、約七千万円という見積額は常識を外れた高さと言わざるを得ない。米側に遠慮せずに見積額を精査する必要がある。また、米軍再編費用の日本側負担の総額について在日米軍司令官はこれまで、約二百六十億ドル(約三兆二千二百億円)という金額を提示し、理解を求めているが、きわめて大ざっぱな金額であり、うのみにはできない。


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