過去二十年で最も早く、インフルエンザが全国的な流行期に入りました。岡山県は特に患者数が多く、六日には県が注意報を発令。感染防止へ、一層の警戒が必要です。
今冬は昨冬と異なり、治療薬のタミフルは十代の患者への処方が原則、禁止されました。因果関係は不明としながら、服用後の異常行動を受け厚生労働省が今年三月、製薬会社に指示したためです。ただ、死亡例を含め高所から転落するなどの事例が二〇〇一年の発売後相次いでいただけに、指示の時期が遅くなかったか、疑問が残ります。
薬剤をめぐり、国の対応が遅れていると思われるケースはこの件にとどまりません。止血剤フィブリノゲンの投与後にC型肝炎を発症した薬害肝炎問題。厚労省は、一部患者の実名が記載された四百十八人分のリストを、製薬会社から受け取った後、五年間も放置していました。
「早く知っていれば適切な治療を受けられ、病気の進行を止められた」。患者側が訴えるように、多くの命を奪った五年もの「空白」は重いと言わざるを得ません。
さらに、新薬が世界で最初に発売されてから国内で販売されるまでの期間が米国より平均二年半長い約四年間もかかるという時間差が、「ドラッグラグ」という言葉で問題視されています。
新薬承認について、舛添厚労相は今秋、審査体制を強化することで期間を短縮する方針を示しました。タミフルやフィブリノゲンの例を教訓に、患者の生命を置き去りにするような薬事行政の遅れは、繰り返さないでほしいと思います。
(社会部・中田秀哉)