再生医療への期待が高まっている。名古屋大は、乳歯による再生医療を研究するため「乳歯幹細胞研究バンク」を設立したという。
乳歯の中から、骨や神経などさまざまな細胞に成長する幹細胞を取り出して保存し、研究に役立てる。乳歯は幹細胞を高密度に含み、増殖能力が高い。そのうえ、自然に抜けるから提供者の負担や倫理的な問題も少ないのが利点だそうだ。
当面は、名古屋大病院などから乳歯の提供を受ける。実用化されれば、自分の乳歯を使って折れた骨を再生するのはもちろん、親や祖父母といった近親者への再生医療の可能性も広がる。
乳歯は、生後六カ月ぐらいから生えはじめ、二、三歳ごろまでに生えそろう。とかく「永久歯へのつなぎ」と軽く見られがちだが、なかなか重要な役割を担っているようだ。ものをかみ、あごの発育を助ける。永久歯が正しく生えるかどうかも乳歯の状態にかかる。
親や祖父母には、かわいい子や孫の成長の証しでもある。岡山文庫「岡山のことわざ」には、抜けた乳歯が「上の歯なら床下に、下の歯なら屋根に」とある。投げる時には「ネズミの歯とかえてくれ」などという。屋根も床下もないマンション生活が増えたためか、ケースに入れて保管する家庭も多いとか。
生えても、抜けても感動をくれる。再生医療に役立てば、喜びはさらに大きくなろう。