名古屋市立大学大学院医学研究科元教授の汚職事件で問題となっている博士学位申請者から論文の審査担当の教授らへの謝礼が、名古屋大学大学院医学系研究科でも慣例となっていたことが毎日新聞の調べで分かった。複数の同大出身医師が「人事権を握る教授に目を付けられたくなかった」などと認めた。同大は「個人の良識に任せる」として調査はしないという。【桜井平、岡崎大輔】
証言したのは、01〜03年度に同大での論文審査を経て学位を取得した愛知県内のいずれも40代の男性勤務医。
名古屋市近郊の勤務医は先輩の助言で、審査の主査の教授に20万円、副査に5万円を渡した。主査からは10万円程度の祝い品が届いたという。「あいさつ程度の意識だった。医局ごとに謝礼が義務的だったり自由だったりで、断る教授もいた。相場が100万円の医局もあった」と話す。医局や教授によって相場に差があり、三河地方の勤務医は「審査のお礼に約30万円を合格者で折半して渡した。折半方式だったので合格者が多いほど助かった」と語った。
また「自分は渡していない」という名古屋市内の勤務医も「多い人は1本(100万円)包んだ」と証言。慣例の背景を「先輩と違うことをして、へき地に送られるのを避けるのが一番の理由。我々は首根っこをつかまれていた」と説明した。尾張地方の勤務医も「系列病院に派遣する人事権を握っており、教授の力は絶対だった。謝礼を払わない方が怖かった」と話し「昔からみんなやっていたこと」と強調した。
浜口道成・医学系研究科長は「事実なら情けない。やってはいけないことに決まっている。だが受け取る側と渡す側の見識の問題で、大学として調査はしない」と話した。
事件では、名市大大学院元教授の伊藤誠容疑者(68)が、口頭試問の内容を学位申請者5人に事前に教えた謝礼に現金を受け取ったとして収賄容疑で逮捕された。
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