愛知県豊田市で26番目の条例制定 拡がる子どもの権利条例 11/01
ここ数年で、各自治体による子どもの権利条例の制定が広まっている。10月1日には26番目の子どもの権利条例「豊田市子ども条例」(愛知県)が制定された。また、広島では中国地方弁護士会が「子どもの権利に関する条例案(モデル案)」を発表し、注目を集めている
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子どもの権利条例は、国連子どもの権利条約の自治体レベルでの具現化を目指すもの。各自治体の条例は、@原則条例(子どもの権利の理念・原則・施策の方向性を定めたもの)、A個別条例(権利侵害に対する救済規定など)、B総合条例(理念、救済規定、施策の指針など)の3つに大別される。
日本で初めて制定された子どもの権利条例は兵庫県川西市の「川西市子どもの人権オンブズパーソン条例」(98年制定)。子どもオンブズマン(子どもの利益の擁護者)の特化条例として注目された。また、日本で初めて総合条例を制定したのが神奈川県川崎市(00年制定)であった。
ここ数年、各自治体で条例化が進み、現在では26の自治体で条例が制定された。昨年12月に制定された福岡県志免町、石川県白山市などでのとり組みは「子どもの権利保障につながる」という評価を得ている。しかし、自治体による「子どもの健全育成」を目的とする条例も制定されている。
今年3月に制定された「大阪府子ども条例」では、前文に「子ども自身も(中略)自ら考え責任を持って行動する社会の一員であることを自覚すべき」との文言が盛りこまれた。ほかの自治体の条例でも「社会の一員としての自覚」を求める文言が盛りこまれている。また、岐阜市の「子どもの権利に関する条例」(06年3月)では、子どもの責務として「自分の権利を実現すること」「いじめや差別など(中略)の行為がなくすこと」「地域活動やボランティア活動などに主体的に参画すること」を努力条項として盛りこんだ。
子どもの権利条例は、そもそも子どもの権利保障を具現化するもので「子ども自身のあり方」や「子どもの育成方針」を盛りこむ条例には、市民から批判が集まっている。
こうしたなか、今年10月1日「豊田市子ども条例」が制定された。豊田市では05年10月から準備が進められ、子ども会議(510人参加)なども開かれた。豊田市は「子どもの権利を保障し、社会全体で子育てを支援する仕組みづくりを目指す」ことを目的に条例を制定。条例のなかでは「子どもの権利と責任」を明記する一方、「ありのままの自分が認められること」「遊ぶこと」「安心できる場所で休むこと」などが権利として明記された。
また10月13日、中国地方弁護士連合会が子どもの権利に関する条例(モデル案)を発表した。モデル案では、「すべての子どもの生きる権利」「自分らしく育つ権利」などが保障されることを明記した。また、これまでの条例には見られなかった「将来にわたって戦争のない平和な社会で育つ権利を保障する」ことや、具体的な子どもの意見表明県を保障するために「子ども会議の設置」「子ども住民投票制度の設置」も盛りこまれた。中国地方弁護士連合会は、モデル案を提示して広島市など各自治体に条例の制定を促す予定。
なお、現在、権利条例を具体的に策定中なのは、新潟県上越市、愛知県名古屋市など5自治体であった。
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