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教育ニュース

本当にできるの!?大学受験に「高卒テスト」

[教育動向]

斎藤剛史

2007/12/10 10:00:00

高校を卒業しただけでは、大学受験ができなくなる?
政府の教育再生会議では、大学教育と高校教育の質を確保するために「高卒学力テスト(仮称)」を創設し、それに合格した者のみに大学入試を受ける資格を与える、という案が検討されています。同会議の会合では委員の間から慎重論も出され、第3次報告に盛り込まれるかどうかは流動的なようです。ただ、大学受験のための資格試験をつくるべきだという議論は、以前から繰り返し教育改革の議題に挙げられています。「大学全入時代」を迎えるなかで、このテーマは今後も論議されることになるでしょう。

日本の大学を受験するための資格は、原則として18歳以上で、高校卒業資格(いずれも見込み可)をもっていることです。つまり高校を卒業していれば、誰でも大学入試を受けられます。しかし、高校進学率が低い時代や大学受験の競争率が高い時代にはそれで問題なかったのですが、高校等進学率が97%を超える現在、高校卒業というだけでは大学教育にふさわしい学力を生徒がもっていることを保証できなくなりました。また、実質的な大学全入時代を迎え、私立大学では学力検査のない推薦入学やAO入試による入学者が今春、入学定員全体の半数を超えており、大学生の質の低下も大きな問題となりつつあります。

このため、大学教育を受けるのに最低限必要な学力があるかどうかを「高卒学力テスト」などで判断し、合格者のみに大学受験を許す、というのが、同会議検討案の構想です。実際、フランスの「バカロレア」やドイツの「アビトゥア」など、大学入学資格試験を実施している国はあります。ただ、これらの国では義務教育後の教育機関が高校と実業学校などにわかれており、高校進学率が日本に比べると格段に低いほか、大学入学資格試験に合格すればどの大学にも原則として無試験で入れるなど、日本とは異なる背景があります。

現実問題として大学入学資格試験は困難だ、という指摘も少なくありません。たとえば、導入により受験者数が減少すれば、多くの大学が経営危機に瀕(ひん)することになる可能性があります。また、ほとんどの子どもたちが入学する高校は多様化が進んでおり、生徒全員が大学入学資格試験に合格する高校もあれば、多くの生徒が合格できず卒業しても大学受験ができないという高校も出てくるでしょう。そうなると、「高校教育とは何か」という、学校制度の根幹にかかわる議論が必要になってきます。

高校生に勉強の動機付けをし、大学生の質も確保できる、ということで、「大学入学資格試験」は一石二鳥の合理的な制度のように見えますが、日本の高校教育や大学教育への影響を考えると、まだまだ慎重な検討が必要というのが現状でしょう。

斎藤剛史さんプロフィール

斎藤剛史さんプロフィール

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。
日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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