2007-12-09
■[漫画・アニメ]新海誠さんの特別授業
デジタルハリウッド大学で開催された新海誠監督の特別授業に参加してきました。
非常に濃く、実り多い90分でした。
以下、メモ形式になりますが当日の授業内容の要旨を記しておきたいと思います。
PCでのアニメ制作開始のきっかけ
- そもそもPC、Photoshop、After Effectsといった環境が前提にあった。
- 会社(ゲーム制作会社)では上記環境で仕事をしていたので、これらの環境が制作を考える上での大前提になっていた。
- デジタル上の表現であっても「セル画と画用紙」のイメージを大切にしたかった。
- PCを使う使わないに関わらず「自分がどういう画が気持ち良いと思えるか」というイメージを常に明確にすることが肝要。
「ほしのこえ」の制作について
- 実制作期間は8ヶ月
- 1人で作る作業の原動力は「とにかく作りたかった」という思いに尽きる。
- 会社(ゲームソフト制作会社)での仕事も楽しかったが、アニメだけにフォーカスした仕事ができる訳ではなかったので常に不全感を持っていた。
- 本格的な制作は会社を辞めてからであったが、会社を辞める事で全ての時間を制作に費やせるようになった。
- 制作期間中はただひたすらに楽しく、不安は感じなかった。
- 貯金とかがあった訳でもなく、後の暮らしを考えるならばもっと不安になっていなければならなかったようにも思うが、当時はとにかく「自分の好きな作品制作に没頭できる」ことが楽しく、それ以外の思いは殆ど無かった。
- そういった感覚は恐らく一生に一度の体験であり、今後味わえる事は無いと思っている。
チーム制作での留意点
- ほしのこえ以降はチームでの制作を行っている。
- チーム制作に至った理由は、単純に「1人が寂しくなった」から。一つの作品を共に創り上げる仲間が欲しい、と強く願うようになった。
- チームを構成する仲間に対して願う事は「この作品を創りたいんだ」という情熱を常に持ち続けてほしいということ。他者からの強制ではなく自分の意志で関わっていてほしい。
「仕事に対する対価」の考え方
- 「無償で良いので手伝わせてほしい。何でもやります。」というメールは毎週のように届く。
- 有り難いことではあるが、そういったメールでのお話は全てお断りしている。
- 給料を数十万円払ってでも一緒に仕事をしたいと思える人と一緒にやりたいと感じているし、作品にとってもその方が幸せ。
- また仕事をする上で「無償で良い」という考えは僕には無い。
オリジナル作品を生み出す為に
- オリジナル作品の創出は、年々難しくなってきていると感じている。
- 最初は誰も自分の事を知らないのだから、ただ自分の好きな事に突き進んで制作すれば良い。
- だが作品制作を重ねる毎に、自分の中での、また他者からの「クオリティ向上」の期待に応えなければならなくなる。
- Youtube、ニコニコ動画等に過去の数多の素晴らしい作品がアーカイブされるようになっている現在において「ああ、既にこんなに凄い作品が生み出されているのだから、今更自分が創らなくても良いんじゃないか?自分に創れるモノはもう無いんじゃないか?」と思ってしまう人が多くなっていると思う。自分も稀にそう感じる時が有る。
- そういった過去の素晴らしい作品を常に目の当たりにしている状況においても「それでも自分だけのオリジナルを創出したい」という強い意志を持ち続けることができるかどうかが分水嶺になると感じている。
制作過程において絶対に譲れない部分
- 自分の実感から出てきたものだけを作品化したいと常々考えている。
- 「これを作らなくてはならない」と思えるものだけを作って行きたい。
- 日々、映像についての新技術が生まれ、その新技術を導入することでテクニカル的には過去よりも新しい作品を生み出す事ができるが、そういったテクニカル面だけではなく、自分の深層心理から溢れ出る感情をベースに新しい製作を行って行きたい。
新海作品テーマとして「男女の淡い恋」が多い理由
- 自分でも良く分からないのだが、「男女の淡い恋」というものが或る種の共通認識、若しくは普遍的な事象になり得ると期待しているからかもしれない。
- 男女に限らず、例えば人と猫、人とハムスター、何でも良いのだけれど「1対1」のコミュニケーションを重視したいと思っている。
- お互いがすれ違って行く中にも教訓を見出したいし、ディスコミュニケーションの中からでもポジティブな心象を具現化したい。
言葉のストックについて
- 断片的なストックを溜め込む作業はしていないが、気が向いた時に書き留める日記的な作業を10年以上続けている。
- 日記は全てPC内にデータとして保存しており、シナリオを書き始める際に自分の日記を特定のキーワードでふるいにかけてみると、昔の日記に今では忘れてしまった感情が瑞々しい言葉で書かれているのを発見したりして、思わぬ所でシナリオ制作の役に立つことがある。
影響を受けた作品
- 「天空の城ラピュタ」に描かれている雲が非常に印象的で、ラピュタを見た後に実際に空に浮かぶ雲を見上げて「ああ、曇ってこんなに美しいんだ」と感じることができたのが自分が背景美術に特に拘りを持つようになったきっかけ。
- 「エヴァンゲリオン」については、当時大いに話題になっていたという事もあるが、アニメ制作自体についての興味を掻き立てられた。特にラスト2話については世間での評価は色々あったが、個人的には止め絵であるにも関わらず高い緊張感を維持している作風に驚かされたし、メッセージを伝える為には必ず緻密な作画が必要不可欠である訳ではないという提言にも感じられた。
アドバイス、メッセージ等
- とにかく「モノを沢山考える」ことが大切。
- 作品作りが自分にとってどれだけ大切なのかということを常に感じること。
自分のノートから書き起こしているのですが、所々意味不明な箇所も…(汗
また書き足りていない部分も多々あります。
折に触れて加筆修正していきたいと思います。
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