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  医師不足の総合対策

H19/02/18

福島 豊

複合的な原因

 医師不足が深刻な問題として指摘されている。小児科医、産婦人科医の不足など診療科目による医師不足や、へき地や地方都市といった地域による医師不足など、さまざまな形での医師不足があり、結果として救急医療の受け皿がない、またお産をするところがないなど国民の生活にも大きな影響を与えている。昨年来、わたしは青森県や福島県など各地を訪れ、医療関係者や行政の方々から話を伺い、複合的な原因により医師不足が生じていると認識している。

 その原因の第一は、医師の養成のプロセスが変化したこと。臨床研修制度が平成十六年から義務化され、それまで医学部を卒業後、大学病院の医局に入局し研修を受け、市中病院などに派遣されるという仕組みから、自ら全国で研修を受ける病院を選択する仕組みに変わったのだ。これにより大学医局が医師の進路をコントロールする機能が空洞化しつつある。地方の医療機関は大学医局から医師の派遣を受けることにより医師の確保をしてきたが、それが困難になっている。

医師の過重労働

 また第二は、この数年にわたって厳しい医療費の抑制策が継続されたこと。医療機関の経営が悪化し小児科などいわゆる不採算な診療科目の維持が困難になったり、今まで以上に医師に過重労働を強いる事態となった。小児科や産婦人科など医師数がそもそも少ない科目ではより厳しい勤務が常態化し、勤務医から開業へという選択をする医師が増え、残った医師の勤務がより過酷なものとなるという悪循環を生み出している。第一の原因と重なり合うと内科など医師数が比較的多い科目でも同様の事態が生じている。

 第三は女性の医師が増えてきたにもかかわらず、仕事と生活の調和を図る対策が十分講じられてこなかったことである。そもそも過重労働を強いる環境の中で、仕事と出産・子育ての両立が難しいことが、女性医師の勤務の継続を困難にしている。

女性医師への支援

 昨年わたしは厚生労働大臣に対して医師不足への総合対策を提案した。医学部の定員、特に地方枠を拡大すること、地方病院の集約化を図り、小児科などの体制の強化を図ること、また採算性を高めるよう適切な診療報酬の評価を行うこと、女性医師が仕事と生活の両立を図れるよう支援体制を充実すること、臨床研修制度の見直しを進めることなど総合的な取り組みを求めた。

 安心して生活をするためには急病や出産に際して、必要な医療がいつでも利用できることが不可欠である。今まで専ら医療費の抑制が唱えられてきたが、国民の生活を支える社会資本としての医療を今後どのように維持していくのか、積極的な議論を進める必要がある。(衆議院議員)




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