ガソリンや自動車にかかる税金を原資とする道路特定財源について、政府、与党が揮発油税などを本来よりも高くしている暫定税率を二〇〇八年度以降も十年間延長することで合意した。
使い道では、今後十年間の道路整備目標を示す中期計画に計上する道路整備費は五十九兆円とし、国土交通省案から六兆円削った。新たな使い道としては高速道路料金の引き下げに十年間で二兆五千億円を充て、また地方の道路整備を支援するため自治体向けに五年で五千億円の無利子融資枠を設ける。
道路特定財源の余剰分は一般財源化する方針が昨年末に閣議で決まっていたが、〇八年度の一般財源化は本年度の千八百億円をやや上回る程度になる見込みとされる。
道路整備に使うことを目的とする道路特定財源は、車の利用者が税負担している。原則に沿った使い方が信頼につながろう。一般財源化する前に、やはり暫定税率引き下げや撤廃を考えるのが筋だ。
国交省は十年間の道路整備中期計画案で余剰分が出ない形にした。だが、政府の方針を逆手にとって「財源を余らせない計画をつくった」と批判も出た。計画を精査し、真に必要な道路に絞って建設することが肝要だ。
結果として建設費に余裕が出るなら、道路関連事業に充てる道を検討すべきではないだろうか。日本の道路の現状を見れば利便性を高めたり、経済効果を上げたりすることに使途を広げても、利用者に納得されると思える。
一番が今回も盛り込まれた高速道料金引き下げだ。十年間、二兆五千億円でどれだけ料金が下がるのか明らかではない。事業者を含め、車に乗る人が過度の負担感なく高速道を使える水準まで下げる必要がある。瀬戸大橋を含む本四三橋も通行料金を十分引き下げ、地域の一体的発展に役立てなければならない。
高齢者や子どもを守るための生活道の安全施策や、交差点改良などによる渋滞対策にも予算が必要になる。
自転車対策も重要だ。自転車利用者、事故ともに増え、警察庁と国交省の有識者懇談会は今夏、自転車専用帯や専用道の整備を提言した。さらに、特に都市部では駐車違反の取り締まり強化に伴い配送業者らが車の置き場所に困っている。専用駐車枠を設けることなども考えられる。
既存道路の使い勝手をよくする余地はいくらでもあり、それは都会の人にもメリットをもたらす。道路特定財源を有効に投入することで、少子高齢社会の暮らしがより快適になるだろう。
自治体財政健全化法に基づき総務省は、自治体財政を破たん状態の「財政再生」と、黄信号を示す「早期健全化」の二段階でチェックする四指標の数値基準を決め、都道府県や市町村に通知した。二〇〇九年秋にまとまる〇八年度決算から適用される。
〇六年度決算にこれらの指標を当てはめると、早期健全化団体の可能性がある自治体は、五十―百に上るという。今後指標の公表が義務づけられるが、各自治体は来年度の予算から指標を意識した編成を迫られよう。
六月に成立した健全化法は、財政を透明化することで破たんを未然防止するのが狙いだ。北海道夕張市の赤字隠しの反省から、新たに連結実質赤字比率と将来負担比率の二つの指標を導入し、公営企業や公社、第三セクターまで含め総合的に財政をチェックできるようにした。これまで見えにくかった部門の赤字や借金も明らかとなろう。
四指標の一つでも基準を超えた自治体は早期健全化団体と認定され、健全化計画策定が義務付けられる。さらに悪化した場合は財政再生団体となり、国の管理下で再建することになる。
自治体の財政破たんは住民生活を直撃する。夕張市では、負担増や行政サービスの低下になって跳ね返ってきた。各自治体は、健全化法が適用される〇八年度決算までに財務体質を改善しておく必要がある。情報開示を積極的に進め財政規律の向上に努めねばならない。
議会や住民にとっては財政が把握しやすくなったメリットは大きい。無駄な出費を排除するなど税金の使い道に関心を持つようになろう。議会は行政を監視する能力を高める機会としたい。
(2007年12月9日掲載)