2007-08-10 嫌韓経済学?

中国と韓国はどちらも日本の隣国であり、最近は「特定アジア」などと一緒にされて批判されることも多いのです。しかし中国経済については書籍やマスコミ、ネットで論じられることも多いのですが、何故か韓国経済はほとんど論じられることがありません。
そんな中、最近、韓国経済を論じた一冊の本が出版されました。タイトルを見るといかにも嫌韓っぽい臭いがしますし、実際、韓国に批判的な本なのですが、経済分析そのものは国際収支に基づいたもので、面白い指摘も多いと思ったので、今回取り上げることにしました。
この本によると、韓国の2004年以降の国際収支は次のようになっています。
2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年1〜3月 | |
---|---|---|---|---|
経常収支 | 281.7 | 149.8 | 60.9 | -15.2 |
貿易収支 | 375.6 | 326.8 | 292.1 | 61.8 |
サービス収支 | -80.4 | -136.5 | -187.6 | -61.8 |
所得収支 | 10.8 | -15.6 | -5.3 | -6.9 |
経常移転収支 | -24.3 | -24.8 | -38.1 | -8.3 |
資本収支 | 75.9 | 47.5 | 186.1 | 48.4 |
直接投資収支 | 45.8 | 20.1 | -34.8 | -9.6 |
証券投資収支 | 86.1 | -17.2 | -225.4 | -101.5 |
その他投資収支 | -38.5 | 68.1 | 476.7 | 167.6 |
資本移転及び非金融資産収支 | -17.5 | -23.4 | -30.3 | -8.1 |
外貨準備高増加 | 387.1 | 198.0 | 221.1 | 39.9 |
誤差脱漏 | 29.3 | 0.6 | -25.9 | 6.7 |
(金額の単位は億ドル)
これを見ると、次のようなトレンドがあることが分かります。
- 経常収支の急減(今年は経常赤字転落?)
- 貿易黒字の減少
- サービス収支の赤字拡大
- 所得収支の赤字化
- 経常移転収支の赤字拡大
- 資本収支
- 直接投資収支の赤字拡大
- 証券投資収支の赤字拡大
- その他投資収支の黒字急増
- 資本移転及び非金融資産収支の赤字拡大
このそれぞれに対して、この本では次のような原因説明がされています。ただ、この説明は他の要因との比較検討が十分にされているとは言えず、作者にとって都合の良いニュース記事だけが資料として示されているように思えます。これがこの本の弱点でしょう。
トレンド | 原因 |
---|---|
貿易黒字の減少 | 労組の無理な要求による人件費の高騰 日本への技術依存による、資材・部品コストの高騰 |
サービス収支の赤字拡大 | 海外旅行の急増 海外留学(教育難民)の急増 |
所得収支の赤字化 | 韓国企業の大株主である外資系ファンドへの配当急増 |
経常移転収支の赤字拡大 | 海外留学した子供や付き添い家族を支えるための送金増加(逆単身赴任) |
直接投資収支の赤字拡大 | 韓国企業の海外投資急増と国内投資の低迷(産業空洞化) |
証券投資収支の赤字拡大 | 国内株式への投資低迷、海外株式への投資急増 |
その他投資収支の黒字急増 | 円キャリートレードによる短期外債の急増 資金の流入先は不動産と家計向けの高金利ローン |
資本移転及び非金融資産収支の赤字拡大 | 海外移住者による資産持ち出し |
ただし短期外債については次のようなデータがあり、2006年度末の短期外債比率は43%(アジア通貨危機前のタイの比率とほぼ同じ)であることが示されています。
2004年末 | 2005年末 | 2006年末 | |
---|---|---|---|
対外債務 | 1723 | 1898 | 2633 |
長期 | 1159 | 1239 | 1497 |
短期 | 563 | 659 | 1136 |
対外債権 | 2842 | 3080 | 3627 |
対外純債権 | 1119 | 1188 | 994 |
(金額の単位は億ドル)
また、韓国銀行(韓国の中央銀行)は、韓国の2006年度の成長率として4.0%と5.0%の2種類の数字を出しており、後者の数字は2006年度の第1〜第4四半期の対前年同期成長率を平均して出している(つまり2005年の成長も含めて底上げしている)と指摘して、韓国の経済統計への疑問も示しています。
確かに作者の原因分析には恣意的なところもありますが、韓国の急激な経常黒字減少や短期外債増加、それに成長率への疑問は興味深い指摘だと思います。
この本の作者は経済学者ではなく中小企業診断士だということですが、この本の内容が嫌韓派の間で一人歩きする前に、まっとうな経済学者が近年の韓国経済の分析を行い、この本の内容を検証することが必要だと思いました。
盧武鉉政権の経済政策には大きな問題があるという指摘は、これまでも韓国国内から聞こえてきましたが、こうやってデータを見せられると、やはりそうなのかなと思ってしまいますね。
http://tmp6.2ch.net/test/read.cgi/asia/1186716984/
因みに、こう書いてます
5月にファンド決算があるため、昨年同様、株式は大きく値を下げると思います。(都合よく?株高
ウォン高ですし。いや、都合よくではなく、計算どおりか・・・)
しかも、不動産バブル崩壊が始まった状況で、短期外債返済の期日を迎えるため、5月末には
金融クランチが表面化(具体的には、市中銀行が二、三軒飛ぶ)すると確信しています。
ご存知のとおり外れました
なんかありましたっけ?
なるほど、やはりそういう所から出てきたものでしたか。
まあ韓国に限らず、経済に潜在的な問題があることは分かっても、いつその問題が表面化するか予言するのはまず不可能ですからね。
そんな予言をするのは軽率と言うしかないです。
>fhvbwxさん
韓国の新聞記事では、確か格差拡大と不動産バブルがよく指摘されていたと思います。あと、少し前はカードローンの問題もありましたね。
成長率の低下や不動産バブルは、日本でも円高局面で経験しました。
失業率は、ごまかしがあるような気がする。
日本と異なって、韓国人の海外脱出は気になる。しかし、代わりに安い外国人が入っているので帳尻は合っている。
ウォン高政策をやめれば、一気に韓国企業の競争力が回復するでしょう。
通貨の強さを国益と思っている人はどの国にもいますが、盧武鉉大統領もそういう人物なんでしょうか?
新政権がウォン安政策をとると、今日本に沢山来ている韓国人観光客は一気に減りそうですね。あと、そうなったときに短期外債がどうなるかも気になりますね。
少し前までの韓国は好況だったので政府が介入するほどの必要があったとは思えないのですが、本当に問題なんですか(特に後者)。
短期外債に頼った不動産バブルという状況が本当なら、それは問題だと思いますよ。
> るのだと思います。
必ずしもそうは言えないでしょう。
確かに、ニュージーランドなどと同じく、資産インフレが育ちつつあるので、それを止めようと政策金利の高目誘導をしています。
これが、低金利国つまり日本から資金が流入する原因となりウォン高になっているわけです。
しかし、ウォン高にするのが目標ではないので、なんとかウォン安にしたいと為替市場への直接介入もしています。
もっとも、為替市場への直接介入は通貨の流通量を増やしインフレを助長する訳で、最初の引締め政策と矛盾します。
結局、ニュージーランドと同じように資産インフレと自国通貨高を同時に防ぐ方法がなくて、苦しんでいる状態だと思います。
韓国はウォン安介入のときは不胎化(市場から介入に使用した通貨を回収すること)をするでしょうから、介入がインフレを助長するとは限らないと思いますよ。この記事で紹介した本によると、韓国では「通貨安定証券」というのが、不胎化のために発行されているようですね。
実際、インフレ率は2004年3.6%、2005年2.8%、2006年2.2%と、むしろ下がってるようですから、為替介入がインフレを促進したとは言えないでしょう。
むしろ、韓国が金利を高くした結果、日本などから資金が流れ込み、その資金がますます資産価格を高騰させ、その結果、資産インフレとウォン高が同時に起こったのだと思います。
(参考資料)韓国経済の現状と日韓経済関係(外務省北東アジア課)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/korea/pdfs/keizai.pdf
http://www.nagano-cci.or.jp/tayori/690/ts_690.html
<池 日本のマスコミによると、韓国は経済危機以降、構造改革に成功したと高く評価しています。しかし、これは誤解です。立ち直ったかに見えますが、実のところアメリカをはじめとする外資に乗っ取られているような状況です。現在、韓国株式市場の時価総額の四八%を外資が持っており、そのほとんどが優良銘柄です。つまり、一部優良企業が、国外市場を開拓して得た利潤の多くは、外資を潤しているのです。一方で、中小企業は辛酸を舐めています。結果、韓国では貧富の格差が広がっています。また、五百万人にものぼる多重債務者の存在も、韓国経済の足かせになりかねません。韓国経済にも、光の部分があれば、陰の部分もあるのです>
韓国経済が外資に乗っ取られているという指摘は、この記事で紹介した本にもありますね。日本に比べると、外資比率は非常に高いようですね。
この本の話はやや古いかもしれません。北朝鮮や中国で作った製品を韓国経由で輸出しているので黒字定着という話もありました。そこに目をつけブッシュパパ?がウォンを買っているという噂もあります。ところが昨年あたりから、重工、造船、鉄鋼、自動車が好調で設備投資もしています。サムソンはやや行き詰っていますが、ほかの産業が通貨高でも復活しているのでこれはなかんかのものですよ。ただし、設備投資の機械類は日本頼ですえどね。米国債を大量に保有はしているので、信用逼迫を当面ないと思いますけど。
ミスタッチが多かったようで、すいません。
>北朝鮮や中国で作った製品を韓国経由で輸出しているので黒字定着
北朝鮮の場合は開城工業団地の製品を韓国経由で輸出しているのでしょうが、中国の場合は韓国経由にする意味がないように思えます。中国にある韓国企業の工場から第三国に輸出しても、それは中国の輸出としてカウントされるはずですから。
>ところが昨年あたりから、重工、造船、鉄鋼、自動車が好調で設備投資もしています。
この投資が韓国の国内投資なのか、海外投資なのかが気になりますね。
>米国債を大量に保有はしているので、信用逼迫を当面ないと思いますけど。
外貨準備はまだまだ豊富ですから、仮に投機筋がウォン危機を起こそうとしても、これを崩すのはなかなか大変でしょうね。
ただ、韓国が米国債売却を始めると、それはそれで波乱要因となるかもしれません。
そうですか。韓国経済は新政権発足まで持つんでしょうかねえ。