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2007年12月08日(土曜日)付

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独立行政法人―改革を頓挫させるのか

 政府が大なたを振るうはずだった独立行政法人の改革が、頓挫しそうになってきた。いわゆる「独法」である。

 改革案を練ってきた政府の有識者会議(座長・茂木友三郎キッコーマン会長)が、福田首相へ先週報告した。内容は、11法人の廃止・民営化をはじめ、事業の整理・統合などだ。全部で102もある独法にはムダな事業が多い。会議には民間の視点でそれを徹底的に洗い出すことが期待されていたが、時間的な制約もあり、切り込み不足だった。

 だが、その案ですら実現が危うくなっている。渡辺行革担当相は関係閣僚との調整に乗り出したが、予想どおり各省庁が激しく抵抗しているからだ。

 独法は、公団や事業団などの特殊法人が衣替えしたり、省庁の事業部門を切り離したりしてできた。民間企業はもうからないので参入してこない。公共性は高いが政府から独立してやった方が効率がいい。そんな事業をするために、6年前から順次設けられてきた。

 それぞれの独法には歴史的な役割もあった。だが、その後に民間が参入したり時代遅れになったりした事業が少なくない。組織を存続させるため、民間の市場へ無理して進出する例もある。

 たとえば、国土交通省が所管する都市再生機構がそうだ。ここが持つ東京都心部の賃貸マンションには、月額家賃が35万円という不動産会社の物件と見まがうような高級なものさえある。

 厚生労働省所管の雇用・能力開発機構は、巨大な施設で多額の予算をつかって職業訓練をしている。これも専門学校にまかせていい領域ではないか。

 弊害はそれだけではない。多くの独法は所管官庁からの天下りの受け皿になっている。随意契約で関係を深めた発注先企業へ、独法からさらに天下るルートもある。こうしたなれ合いが談合の温床にもなり、予算を膨張させてきた。

 だからこそ、政府は8月に「真に不可欠な独法以外はすべて廃止する」との基本方針を決めたのではなかったか。

 気をつけなければならないのは「数減らし」に終わらせないことだ。

 緑資源機構のケースをみれば分かる。官製談合事件を受けて廃止されることが決まったものの、農林水産省は機構の事業を他の独法へ引き継ぐ方針だ。来年度予算では今年度予算を上回る590億円も要求している。「看板」を掛け替えるだけと言わざるをえない。

 独法には毎年度3.5兆円の政府予算がつぎ込まれている。不必要な事業を廃止し、予算をどれだけ削れるか。

 福田首相は各閣僚に「リーダーシップを発揮してもらいたい」とハッパをかけていたのに、省庁の激しい抵抗を受けても静観を決め込んでいる。リーダーシップが必要なのは首相自身である。

 独法見直しに民主党は前向きだ。独自の改革案をつくり、政権担当能力をアピールする格好のテーマにできるはずだ。

イラン核疑惑―情報操作は二度とご免だ

 「話が違うではないか」と、思わず言いたくなる。イランについて米政府が公表した国家情報評価だ。焦点の核兵器開発について「イランは03年秋から停止していた」というのだ。

 この評価報告書は、中央情報局(CIA)など16の情報機関がそれぞれの分析を持ち寄ってまとめた。米国の外交・安全保障政策づくりの基本になる文書の一つだ。大部分の分析は非公開だが、結論のところだけが明らかにされた。

 国際社会の制止を無視してウラン濃縮に突き進むイランをめぐっては、国連安保理がすでに2回の制裁決議を採択し、さらに追加する動きが出ている。

 ブッシュ米大統領は「第3次世界大戦を防ぐには、イランに核兵器製造の知識を与えてはならない」と強い調子で警告したばかりだ。このままだと米国がイラン空爆に踏み切る可能性もある、と世界に懸念が広がっていた。

 今回の報告が、そんな緊迫した空気を一気に緩ませたことは間違いない。ひとまず武力行使の危険が遠のいたのは結構なことだ。

 2年前の報告は「イランは核兵器開発を決断した」と結論づけていた。今回の分析はそれを覆すものだ。メンツにこだわらずに公表したのは評価したい。

 米国は、偵察衛星なども駆使して世界中から情報を集めている。それをもとに行動し、結果として世界が巻き込まれる。仕方がない面はあるにせよ、ここまでがらりと評価が変わるとなると、振り回される方としても釈然としない。

 米国の報道によると、評価を変えるきっかけとなった情報は今年8月にブッシュ大統領にも報告されたという。ならば、なぜ大統領はその後も「イランの核の脅威」を繰り返していたのか。今回の評価を大統領がいつ認識したのか、納得のいく説明をしてもらいたい。

 4年前のイラク攻撃をめぐって、米政権が情報を誇張していたことが明らかになった。米議会が徹底的に調査し、情報組織などが見直された。政権の意図で情報がゆがめられるとすれば、世界はたまったものではない。同じ過ちは、二度と繰り返してはならない。

 一方、イランのアフマディネジャド大統領は、この報告を受けて「勝利宣言」を出した。勘違いしてもらっては困る。

 イランがひそかに核兵器を開発しようとしていたことは、今回の報告も認めている。核開発計画を停止したのは「国際的な圧力の結果」としている。

 そうした過去の疑惑を認めないまま、ウラン濃縮を続けようとしても、国際社会は認めるわけにはいかない。まず濃縮活動を止め、国際原子力機関(IAEA)の査察に全面的に協力する姿勢を見せるべきなのだ。

 今回の報告は、欧州諸国を軸にした交渉や国際的な圧力が実際に効果を上げていたことを示している。今後も冷静な外交努力を続けていくべきだ。

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