「切り札」はトランプ遊びで他の札を全部負かす強い力を持つと決められた札のこと。転じて、最後の決め手をいう。
日本サッカー協会が切り札を出してきた。日本代表を率いてきたオシム監督が十一月中旬、病に倒れファンもこの先どうなるのかと途方に暮れていたが、後任に岡田武史元監督を正式決定したのだ。
日本のワールドカップ(W杯)挑戦は一九五四年スイス大会の予選からで監督は竹腰、長沼、オフト、加茂氏らに引き継がれアジアの壁を越えようとしたが、その都度跳ね返されてきた。初挑戦から十人目、九八年フランス大会の岡田監督が世界への扉を押し開いた。
当時、加茂監督が最終予選の最中に解雇され、岡田氏はコーチから緊急昇格、チームを立て直しW杯初出場に導いた。今回も二〇一〇年南アフリカ大会のアジア3次予選が来年二月に始まろうかという重要なときだ。求心力とリーダーシップを思う存分発揮してもらいたい。
オシム・サッカーのどこを、どのように引き継ぐべきだろうか。オシム氏は自著「日本人よ!」の中で「私は日本のサッカーを日本化する」と面白いことを言っていた。強豪国や名門チームをまねるのではなく「原点に立ち返ろう」というのだ。
つまり走って、走って、走りまくれ、と。新監督はこの走るサッカーを「切り札」に世界と戦ってほしいものだ。