現在は地方選挙に限られている電子投票が、国政選挙でも希望する自治体で可能になりそうだ。電子投票を国政選挙に導入するための特例法改正案が衆院政治倫理・公選法改正特別委員会で自民、公明、民主党などの賛成で可決され、今国会で成立する見通しとなった。早ければ次期衆院選から認められる。
電子投票は銀行の現金自動預払機(ATM)のような画面表示で候補者名にワンタッチして投票するシステムである。疑問票が生じないうえ、深夜から未明までかかっていた手作業による開票作業が省け結果判明が早まるなどの利点がある。
海外でもインドや米国などが国政選挙に導入するなど一般化しつつある。IT(情報技術)世代の若者の投票行動にもプラスに作用するとされる。システムの信頼性などに不安は残るが、時代の流れとして前向きに受け止めるべきだろう。
電子投票は試行措置として、二〇〇二年に地方選挙に限って認める特例法が施行された。各自治体が電子投票条例を定めれば可能になり、急速な普及が予想された。
しかし、条例を設けているのは現在、全国で八市町村にとどまる。国政選挙で利用できないため効果が限定的なことや、システムのトラブルが相次いだためだ。機器のレンタル料などの高さも支障になっている。
今回、特例法が改正され国政選挙でも実施できるようになれば、効果が限られるとするネックは解消されよう。全国で初めて電子投票を導入した新見市は、これまで国政選挙での実現を与野党などに働き掛けており「次期衆院選で実施したい」と法改正を歓迎する。
課題はコストとシステムの信頼性である。投票機器のレンタル料は一般的に一台十万円前後とされ、財政難にあえぐ市町村には頭の痛い問題になっている。
メーカー側は「普及すれば機器の単価が下がり、レンタル料も安くなる」とする。国は交付金措置を予定しており、普及に弾みがつくかもしれない。メーカーにはシステムの信頼性向上と機器の低価格化が求められる。
電子投票は最高裁裁判官の国民審査も対象になる。利用が定着すれば、選挙だけでなく住民投票や国民投票などにも活用でき、迅速で正確な民意の集約に役立とう。
IT時代に即した利便性の高い投票手段として期待は大きい。問題点を一つ一つ克服しながら実績を積み上げ、信頼を築いていくことが肝要だろう。
インフルエンザが全国的に流行し始めた。記録が確認できる過去二十年間で最も早い。岡山県では六日に注意報が発令された。備えを強めたい。
国立感染症研究所によると、十一月二十五日までの一週間に全国の定点医療機関(約四千七百)から報告された患者数は七千百六十二人。一カ所当たり一・五三人と、全国的な流行開始の判断基準である一・〇人を超えた。
都道府県別の定点当たりの報告数で、岡山県は三・八二人と北海道の一二・六四人に次いで多かった。広島県は〇・七五人、香川県は〇・二七人だった。その後も増え続け、岡山県では今月二日までの一週間で七・二三人と注意報発令基準(五・〇人)を上回った。休校(園)や学年・学級閉鎖も相次いでいる。
今季の主流はAソ連型だそうだ。ここ数年流行がなかっただけに、子どもを中心に体内に抗体を持たない人が多い可能性もあり、流行の拡大が心配される。インフルエンザの多くは一週間程度で治るが、抵抗力が弱い高齢者や乳幼児は重症化しかねない。
予防策としては手洗いやうがいの励行をはじめ、睡眠や栄養をとって抵抗力を付けることなどが挙げられる。最も効果的なのがワクチン接種だ。今季は、異常行動との関連も指摘される治療薬タミフルの十代への使用が中止されただけに、ワクチン接種の重要性は一段と高まろう。効果が出るまでに二、三週間かかる。早めの接種が望ましい。
かかったと思ったら医療機関で受診し、水を十分補給して安静にする。同時に、外出を避け人前ではマスクをするなど他人にうつさない配慮も必要だ。自己防衛とエチケットで、流行の本格化にストップをかけたい。
(2007年12月8日掲載)