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タイ:麻薬中毒者の抗HIV治療を拒めばエイズは蔓延する
2007/12/08

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカル、11月29日】

 エイズとの戦いにおけるタイの名声が揺らいでいる。ニューヨークに本部のあるヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)とバンコクに本部のあるタイ・エイズ治療アクショングループ(TTAG)が29日に発表した新しい調査「死に至る拒絶:タイの麻薬使用者のHIV/エイズ治療の障害」は、タイ政府がエイズウイルスに感染しやすい麻薬使用者を軽視していると非難した。

 タイでは麻薬中毒者に対する対応は厳しく、病院がエイズ治療を断る場合もある。治療を求めてやってきた麻薬中毒者の情報を警察や治安当局に通報する病院も多い。そのため、延命のための抗レトロウイルス薬治療を受けている麻薬中毒者は、医者に麻薬使用の習慣がわかってしまうのを恐れる。

 12月1日の世界エイズデー直前に発表されたこの調査の前に、米国のジョン・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部は、タイのHIV患者は世界でもっとも早く死亡していることを明らかにし、「生存期間の短さはタイのHIVのサブタイプがより悪性である可能性を示している」とした。欧米のHIV陽性患者の50%致死時間は11年であるのに対し、タイでは7〜8年である。これはサハラ以南のアフリカ諸国より短い。

 タイは1990年代に国を挙げてキャンペーンを行い、エイズ感染率を15年間で80%削減した。健康保険制度を通じて治療薬も広く普及している。だがHRWの調査が指摘するように、麻薬使用者の問題が除外されていた。タイでは国民の5%に当たる300万人が麻薬中毒であると推測されている。

 風俗産業や軍隊に比べて、麻薬使用者のHIV感染率は下がっていない。地域によっては麻薬使用者の60%が感染しているところもある。HRWの調査報告書は、政府、警察、保健医療当局が患者を支援し、その人権を考慮して、医療を求める麻薬中毒者を罰しないと公言すべきだとしている。

 TTAGのスワナウォン代表は「タイ政府は麻薬中毒のエイズ患者を犯罪者として扱わないでほしい」という。

 タイの麻薬中毒のエイズ患者に対する治療について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=加藤律子(Diplomatt)/IPS Japan松本宏美

IPS関連ヘッドラインサマリー:
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タイ:権利擁護団体、タクシン前首相の対麻薬政策を批判
タイ政府のエイズ対策の転換(前半)
タイ政府のエイズ対策の転換(後半)

(IPSJapan)

バンコクIPSのマルワーン・マカン・マルカルより、タイの麻薬中毒のエイズ患者に対する治療について報告したIPS記事。(IPS Japan松本宏美)


















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