(cache) からてちょっぷだ。:柴田ヨクサルインタビュー

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2007年10月22日

とらのあなの無料小冊子
とらだよ80号に
ハチワンダイバーの作者の
柴田ヨクサル氏のインタビューが
のっているとの情報を聞き、
とらだよを入手しに
秋葉原に行きました。
……が見当たらず。
後日別の店舗を４ヶ所くらい
調べ、とらのあな巡りを
することに。
万全を期して捜そうとしたら
あっけなく１ヶ所目で
無事入手できました。
（秋葉原ではなんとも思わなかったんですが
某支店は店の中と外の
ギャップがすごいアレでした。）
この小冊子が手に入ったのは
結構前なんですが
あと５日くらいは
まだあると思います。
（よく見たら25日発行とのこと
あと２日しかないです。サーセン）

で、当初インタビューから
一部抜粋してちょっとコメントしようかと
思ってたんですが
どうせだからと
全文のっけてしまいました。

（正直かなり黒に近いグレーな
気がするんで怖いってことも
あるんですが）

ちなみに近代将棋の方は
もってないんですよ……
あっちも読みたいんだけど……

とりあえずこれを読んで思ったのは
将棋のルールを知らない人が
意外と多いんだなぁということ。
（僕もハチワンが始まってから
将棋を覚えたから
エラそうなことは言えないんですけど）
ハチワンの読者で
将棋のルールが分からない人は
ルールくらいは知っといた方が
より面白くなると思いますよ。

（つかこのサイトの閲覧者さんで
ハチワン読者が何人いるのか
わかんないんですけど。
最悪ゼロかもしれんですが）

以下

黄字：インタビュアー
白字：柴田ヨクサル先生
緑字：オレのコメント
（もともと自分のコメントは
もっと多かったんですけど
自重しました）

誤字脱字があったら連絡下さい

まずはこの「ハチワンダイバー」を
描くことになったきっかけを
教えて下さい。

一言で言ったら時期が来たっていうことです。
将棋はずっと前から描きたい
題材だったんですけど、
実力的にはまだ描けるところまで
届いていないと思っていたんで
描けなかったんですよ。
実力的って言うのが何を指すかといえば、
絵だったり、まあ色々なんですけど、
読者には将棋自体を分からない人も
多いじゃないですか。
そういった人たちに対してどう描いていくか。
一瞬は、例えば単行本１巻分ぐらいは
描けるかもしれないんですけど、
長くは描けないなって思っていたんです。
ただ、「エアマスター」がおかげさまで
ある程度結果を出すことが出来たせいか、
その次の作品を考えた時に
ここで勝負してもいいんじゃないかって思えたんです。

じゃあこの漫画を描く時はキャラクターよりも
まずは将棋だったんですね？

最初に将棋ありきでしたね。
それでネームを３本起こしてみたんですけど、
実はそれが全部ダメで（笑）、
じゃあちょっと気分転換にということで
編集部の方たちが飲み会を開いてくれたんです。
その時の最後かな、
「女の子を出してみたらどうですか？」って、
提案されたんです。
それで考えてみようということで、
膨らました結果、メイド真剣師、
アキバの受け師さんが出てきたんです。
最初に考えた頃は見た目華やかなっていう
位置だったんですけど、
僕は女性キャラを漫画として描き始めると
どうしてもおっぱいがどんどん大きく
なっていくんですよ（笑）。
受け師さんもやっぱりそうで、
なんかサービス精神を勘違いしてるのか、
せっかくなんだから大きい方がいいだろうって
どうしても大きくしちゃうんです。
多分もっと大きくなるんじゃないかな（笑）。
最初に考えてたネームってわりと
硬派な話だったんですよ。
まあそれで続けていたらすぐに
終わっていたんじゃないかと思うんですけど（笑）。
実は最初のネームでは、
最近になってやっと出てきた
澄野と斬野が主人公だったんです。
特に澄野のほうがメインで
考えていたんですけど、
将棋のことを読者に説明する
キャラが必要だと思って
後から考えた菅田がいつの間にか
主人公になっちゃったんですよ。
最初の１話、２話の段階でも
菅田を主役と決めていなくて、
主役が後から出てくるのもいいだろうと
思っていたぐらいなんです。
だからホントいつの間にか
主役になったというか、
あの自分を「ハチワンダイバー」って
名乗って初めて主役になった感じなんですよ。
１巻の表紙が菅田じゃないのも
単純に菅田を主役に決めた時には
作業が間に合わなかったんですよ、
１巻の表紙に（笑）。
ようやく本誌で澄野が登場して、
主役になってしまったメイドと菅田、
そして主役に考えていた澄野と斬野の
４人全員が揃ったんで漫画としては
これからって感じなんですが、
自分としては本当に描き続けることが
出来るのか未だに安心できないです。
ギリギリのところを走ってるというか、
いつもそうなんですけど
暗闇の中で細いロープの上を
全力で走っているような感覚で描いています。

衝撃の真実。
なんと当初の予定では主人公は
澄野だったッッ！！！
………
これは菅田が主役になったのは
大正解だと思います。

そして漫画としてはこれからだそうです。
鬼将会編の期待が
高まりますな。

将棋の世界でも
なぜ真剣師をテーマにしたんですか？

やっぱり日本将棋連盟とかをいきなり
出しても将棋を知らない人にとっては
余計に分からなくなるんじゃないかって
思ったんです。
あともう一つは
「月下の棋士」（能條純一先生）ですね。
すごくしっかりと将棋の世界が
描かれてる漫画じゃないですか。
だからそれとは違うアプローチの
漫画がいいだろうと思ったんです。
真剣師自体はもうやっている人は
少ないみたいなんですが、
そうした人がたくさんいるって
仮定した世界にしました。
あと真剣師の方が多少自由度が
高いというか、ちょっときな臭いところが
心くすぐるじゃないですか。
ストリートファイトっぽいとも
言ってもらえたんですけど、
例えば相手の情報が
わからないとかそうですよね。
将棋の場合プロは全部で150人ぐらいしか
いなくて、事前に対局相手が分かるんで
棋譜を取り寄せたりして色々研究が
出来るんです。
でもそれが真剣師同士の勝負だと
どんな相手か、どんな手を
指すか全くわからない。
パタッと出会って、
いきなり戦うわけで、
そういったところが面白いと思うんです。

真剣師についてなにか取材とか
されたんですか？
また参考にされた資料とかあるんですか？

真剣師の知り合いはいないんですけど、
時々ご意見をいただくことはあるんですよ。
例えば漫画の中だと将棋盤の
横に賭け金を入れる箱があったりして、
露骨にお金を見せているんですけど、
あれは読んでいる人に分かりやすく
するためで、実際の真剣師の勝負の場合、
お金は盤の下とかに隠して
指しているんですね。
だから描き始めた頃は
「こんなんじゃないだろう」って
言われたりしました。
参考にしたものを挙げるならば、
団鬼六先生が真剣師の一生を
書いた小説「真剣師・小池重明」でしょうか。
漫画だと福本伸行先生の「アカギ」ですね。
あの漫画は麻雀がわからなくても
面白いじゃないですか。
麻雀と将棋という違いはありますが、
意識している作品です。

たとえ将棋が知らなくても
キャラクターの魅力に
引っ張られていく感じというか、
「エアマスター」もそうだったんですけど、
主役・脇役に限らずキャラクターの
個性が強いですよね。

性格上なのかどうかわからないんですけど、
脇役をどうしても活躍させたくなるんですよ。
ドラマとか映画を観ていても
「もうちょっと脇役を活躍させなさいよ」って
おもうんです。
「ドラゴンボール」で言うとヤムチャですね。
僕、ヤムチャが大好きなんですよ（笑）。
彼の最後の必殺技が繰気弾って
１個の弾を繰り出して相手に
ぶつけるって技なんですけど、
あれも１個じゃなくていっぱい
出させればいいじゃんって
思ってしまうんですよ。
１個しかないのがまた
悲しいというか、
しかもその戦いに負けちゃうじゃないですか（笑）。
だからじゃないですけど、
脇役をもうちょっとだけでも
活躍させるのが僕の漫画の
目標というか、
自然にそうなっちゃうんですね。
少年漫画によくありがちなんですけど、
主人公って誰かが負けるのを
待っているじゃないですか。
脇役の誰かが負けて
主人公が勝つみたいな、
脇役の誰かが魔キルのを待っている
主人公ってどうなのって
いつも思っているんですよ。
最後にそいつを倒すには
誰かの犠牲がないと、
といった形じゃなく別に
脇役がいきなり勝っても
いいんじゃないかって思うんです。
だってそいつだって
一生懸命に戦っているんだから。
そういう脇役の頑張りというか
格好いいところは描いていきたいんです。

そういった意味じゃ菅田も
頑張っていますけど、
よく負けますよね。
でもまた這い上がろうとする。
そういった彼の成長物語的な
ところがあるんですか？

やっぱり負けてからじゃないと
始まらないと思うんです。
そこから彼がどう成長していくのか。
元々プロになれていない段階で
彼は奨励会の中では負けているんですよ。
だから真剣師といっても彼の中では
プロが絶対なんです。
それは将棋の世界ではアマはプロには
勝てないっていう僕の考えでもあるんですけど。
でもそんな絶対的なプロに対して、
真剣師という立場からもう一回
プロに挑戦しようというのが
一つの土台としてありますね。
ようやくキャラクターが
揃ってきたんで、これからは
プロとの勝負のようなことも
考えていきたいです。

「ハチワンダイバー」という
タイトルにしたのはどうしてですか？

今迄の将棋漫画ってタイトルに
必ずなにかしら将棋の言葉が
付いているんで、
そこから離れようと
考えたんです。
それで初めにきまったのは
「ダイバー」という単語だったんです。
雰囲気的に、将棋を
ずっと指して考えている感覚が
潜るような感じだったんで。
次に「ダイバー」の前に付けるのは
何がいいかなって考えて
浮かんだのが「81（ハチイチ）」
だったんですよ。
それが語呂を良くしようと思って
英語読みと混ぜた「81（ハチワン）」
になったんです。
「キカイダー01（ゼロワン）」
とかと同じです（笑）。
僕は特撮が大好きで、
だから１巻の最後も
ヒーローっぽく自分で名乗らせたんです。
「ハチワンダイバー」って。
その方がカッコイイじゃないですか。

読んでいて思うのは週刊や隔週雑誌の
漫画にも関わらず大ゴマが
すごく多いなって思うんですけど。

活字の力を信用しているんですよ、
すごく。この大きさよりはこの大きさ
だろうっていうのがあるんです。
この大きさじゃないとその意味自体が
通じないんじゃないかって
思うぐらいに。
だから実際他の漫画に比べても
大きいと自覚していますし、
そこは担当さんからも
もうちょっと小さくてもいいんじゃないですかって
指摘される時もあるんですけど、
なかなか小さく描くことが出来ない。

週刊に変わって大変なことってありますか？
ページ数とか〆切とか
どうなんでしょう？

〆切は死ぬほど大変です（笑）。
月２回の〆切が４回になって、
読者にすぐ読んでもらえる、
毎週読んでもらえるということは
いいことだとおもうんですけど、
僕の漫画って実は短篇の
集まりのように作っているんです。
なるべく偶数ページでオトしていく、
２ページ単位で何とか
読みやすいものとして
やっていこうとしているんですが、
それが今の18ページだと短いというか。
この18ページというのは
「エアマスター」の頃と
比べると６ページ少ないんですが、
まだそのページ数のテンポが
掴めていない感じなんです。
最初の頃はもうボロボロでしたよ。
テンポは掴めないし、
将棋のことを描きすぎると
（アンケート）人気が落ちるんで、
将棋を描く比重をどうするか悩んだり。
さすがにいくらかマシになっていると
思うんですけど、未だに難しいです。
将棋が分からない読者にとっては
やっぱりキャラクターの方が
見たいですよね。
でもどうしても僕は将棋が
好きなんでそれがネックに
なってしまう。
でも描きたいんですよ、
「すごいんだぜ、この局面は！」って。
しかも鈴木大介（八段）さんっていう
すごい方が局面を作ってくれている、
僕としては感動的ですらあるんですけど
それをやりすぎるとダメなんですよね。
３巻では思い切って将棋の
比重を大きくして描いてみたんですけど、
やっぱりわからないという
読者の意見が多かったんです。
僕自身はいい感じでテンパっていて
最高ＭＡＸな感じで描いていたんです。
伝わってくれって。
でもやっぱりダメだった。
だからそういった意味でも全然
安心していないんです。
毎回ギリギリで勝負して、
このときの失敗は残念だったけど、
また勉強して次に活かそうと
思っているんです。

意外にも文字山戦は
人気がなかったようですね。
僕個人はあれがハチワンの中でも
一番好きなバトルなんですけどねぇ…
僕は漫画の好きな部分だけを
ちょくちょく読み返したりする
人間なんですが（エアマスターでいったら
小西対ジュリエッタとか
ジョンス・リー対渺茫とか）
３巻は特に何度も読み返す程好きなんですが…
まぁ分からないという意味では
「この飛車っとれるのかよ
とれないのかよっ」の部分とかは
解説してくれているサイトさんを
見なければ分からなかったんですけどね。
将棋はすごく弱いんで、知識もないですし。
でも失敗なんて言わないで
ああいうガチンコバトルをもっと
描いて欲しいです。

いろんな真剣師が出てきていますが、
こんなヤツがいたら面白いんじゃないかって
考えたりするんですか？

やっぱり漫画ですからそのあたりは
大事にしています。
これからも文字山みたく
職業に関した真剣師も
登場させたいですし、
ニこ神のようにオッパイを賭けるような、
荒唐無稽なヤツとか描いていければと
思っていますけど、
将棋漫画としてのバランスも
大事にしていきたいですね。
キチンと将棋をしていること、
その内容は大事にしたいと思ってます。
僕にとってこの漫画の最終的な
目標は将棋人口を増やすこと
なんですよ。
将棋に恩返ししたいと言ったら
変かもしれないんですけど、
僕自身ある時期将棋しかしていなかった
時期があって、将棋によって
育てられた人間でもあるんで、
将棋の面白さを多くの人たちに
伝えたいんです。

キャラクターの質問なんですけど、
メイド真剣師を登場させたのは
どうしてですか？

単純にキャッチーさですね。
あと後々に「なんでやっているのか？」
といった奥行きを描ければと思っています。
キャッチーさというかわかりやすい
格好という意味でメイド服や
メガネなんですけど、
あとホクロなんかもいい感じで
特徴になるかなって、
１個じゃ目立たないけど２個あれば
鉄板だろう（笑）って
思って付けたんです。
二面性があるキャラ自体は
新しいわけではないと
思うんですが、
やっぱりアイドルでもなんでも
そうですけど届かない存在の方が
いいと思うんですよ。
逆にそんな届かない存在が
いきなり近くなったら、
もうどうしようって感じじゃないですか。
菅田のレベル、奨励会の３段って
実はべらぼうに強くて、
素人じゃ絶対に勝てない
領域なんですけど、
それ以上に強い女の子、
届かない存在の女の子が
膝枕してくれる。
これってすごくドキドキ
するんじゃないかと思うんです。
将来的には他の女性キャラ、
女のライバルなんかも出そうと
思っているんですよ。
真剣師だけでなくいろんな
ところからいろんなキャラを
出して、全部将棋で繋ぐことが
出来ればと思っています。

届かない存在への憧れというか、
すごくストイックですよね。
オッパイを揉みたいけど、
揉んだら弱くなるとか。
あれは最初から揉ませない
つもりだったんですか？

いや、最初は揉ませようと思ったんです。
担当さんにも「ここまできて
揉ませなかったらちょっと悲しくないですか？」
って言っていたんですけど、
ネームを作っているギリギリの
ところで揉ませないことに
決めたんです。
菅田っていうキャラには
こういうオチがつきまとうだろうって。
情けなさこそ真骨頂だろうって。
彼が奨励会を退会したのは
20代になってからなんですけど、
それまで彼には将棋しか
なかったわけですよ。
女の子とも付き合ったことがないんです。
特に家庭環境も悪かったわけじゃなく、
特別不幸だったわけじゃないんですけど、
人生で将棋以外なにもなかったんですよ。
多分奨励会の中でも菅田って
本当に冴えないヤツだったと
思うんです。
今の奨励会って昔と違って
内弟子みたいなものもなければ、
師匠の家に泊まりこんで
やるといったものもないんです。
実際に普通の人たちが多くて、
イケメンとか王子サマって
呼ばれている人もいるぐらいなんです。
菅田って僕らのような素人から
すれば圧倒的に強いんですけど、
彼ら奨励会の中では目立たない、
なんかそんな奴も居たよなって
いうぐらいの存在なんですけど、
そんな彼が真剣師として
這い上がろうとするんです。
将棋に負けるのって
本当に悔しいんですよ、
僕自身も実際にネットで
将棋を指していて、
そこは点数制で、
勝ち負けでランクが
上下するんですが、
かなり上の方だと本当のプロが
戦っているんですよ。
だから僕みたいなヤツでも、
ここでプロと戦いたいって
夢を持って頑張るんですけど、
「ここで勝てば上に上がれるぞ、
２段から３段になれるぞ」って
いうような戦いで負けると
悶える程苦しいんですよ。
漫画家である僕が
こうなんだから将棋しかない
菅田にとっては負けるというのは
この苦しみの100倍以上だと
思うんです。
それはとんでもない辛さ
なんじゃないかって。
どこまで伝わるか分かりませんけど、
菅田が苦しんでいる時は
僕自身も歯を食いしばって
描いています。
あとこれだけ将棋のことを
毎日考えるようになったせいか、
実際に自分の棋力が
上がったんですよ。
こんな強いキャラクターを
出すんだからここまで
強くなりたいって
思うようになりましたし、
強くなれば今迄みえなかった
モノが見えるんじゃないかって
思っているんです。

最後に読者へのメッセージを
お願いします。

終わらないように頑張ります。
ともかく続けていきたいですね。
全力でやっているんで、
思いっきり空振るときも
あるかもしれないんですけど、
必ず取り返しますんで、
これからも読んでいただければと
思います。

(00:20)

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