自殺中学生の父、情報開示で「心のすき間埋まる」…山口・下関
週間ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


 山口県下関市立川中中で2005年4月、3年生の安部直美さん(当時15歳)が首をつって自殺した問題で、法務省と山口地方法務局は11日午後、行政機関個人情報保護法に基づいて直美さんの個人情報開示を求めていた父慶光さん(50)に対し、人権侵犯事件の調査で把握した情報を部分開示すると通知した。同法の規定は、本人の情報について自身による開示請求のみが対象。法の「壁」を越えた決定に、同様の自殺で子を失った親らは「国の判断は大きな前進」と評価している。

 部分開示の連絡は午後2時半過ぎ、仕事中の携帯電話に届いた。慶光さんは「部分開示という決定だけで、心のすき間が少しずつ埋まっていく思い」と心境を語った。開示は17日から18日になる見通しだが、「同じように自殺で子どもを亡くした他の遺族の方々と一緒に内容について考えてみたい」と話す。

 直美さんの自殺から約2年3か月。「気持ちの優しい、親思いの子」だった二女を失って以来ずっと、下関市教委や学校側の「人ごとのような対応」に苦しめられ、「心にぽっかり穴が開いたまま」の日々が続いていたという。「個人情報が開示できることを多くの人に知ってほしい。遺族が各地で裁判を起こしているのは、納得できる説明がどこからもなく、情報をつかめないからです」と残された家族の心情を代弁した。

 直美さんが自殺前、日記などを書いて担任らに提出していた「生活記録ノート」の所在が分からないのも気がかりという。今春、当時の学校関係者が持っているという内容の匿名のはがきが2度にわたり自宅に届いたため、市教委に再調査を求めたが、応じてもらえないまま。慶光さんは「詳しく調べるのが市教委の役割のはず。文部科学省も教委への指導の在り方を考えてほしい」と訴えた。

 一方、昨年10月、いじめを苦に自殺した福岡県筑前町の町立三輪中2年、森啓祐君(当時13歳)の父順二さん(40)は、同じ遺族の立場で慶光さんと交流している。

 順二さんは、今回の部分開示について「すべての情報開示が理想だが、一部でも遺族に伝えようという国の姿勢を見せてもらっただけで、何も知らされずに立ち止まったままの遺族にとって一歩踏み出す大きな力になる」と評価した。

 東京大大学院法学政治学研究科の宇賀克也教授(行政法・情報法)は「亡くなった子供の情報は、親にとっては自分自身の情報と言ってもいいほどのもの。親子の密接性を考慮し、部分開示を決定したことに十分に意義があり、評価できる」と話している。

by miya-neta | 2007-07-12 09:46 | 教 育 | Trackback
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