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明日の私:広がらないジェネリック薬 切り替えで負担軽減 国内シェア、わずか17%

 価格が安く、健康保険の適用となっていながら、なかなか普及しないジェネリック医薬品。慢性疾患などで賢く使えば、自己負担は軽くなる。自分の薬を一度チェックしてみたい。【小島正美】

 ■先発薬の3割安

 たとえば、コレステロールを下げる高脂血症薬の先発薬に「メバロチン」がある。すでに特許が切れ、約20種類もの後発薬があり、価格(保険収載薬価)はメバロチンが1錠(10ミリグラム)で131・4円なのに対し、後発薬は約43~101円。先発薬の半額ともなれば、長く使えば、相当の負担軽減になる。

 国際医療福祉大学大学院の武藤正樹教授(日本ジェネリック医薬品学会理事長)は「負担の軽減効果は使用頻度の高い慢性疾患で大きい。私自身も後発の血圧降下薬を服用しているが、負担は3割程度安く済んでいる」と話す。

 武藤教授の試算では、糖尿病や高脂血症、高血圧の先発薬を後発薬に切り替えると、薬局で支払う薬代のうち、年間で約1万~1万6000円が節約できるケースが出てくるという。節約効果が大きい慢性疾患としてはこの他、狭心症、骨粗鬆(そしょう)症、アレルギー性鼻炎、花粉症、慢性関節リウマチ、肝硬変などがある。

 こうした疾患の薬を服用している人は、切り替え効果を考えてみる必要がある。医師、薬剤師などでつくる日本ジェネリック医薬品学会のホームページの「かんじゃさんの薬箱」(http://www.generic.gr.jp/)で、「ジェネリック医薬品の検索」に自分の先発薬を入力すれば、どんな後発薬があるかが分かる。

 ■医師に不信感も

 気になるのは安全性と効果。先発薬と後発薬は有効成分が同じでも、保存料、着色料など添加剤は異なる。国はこのため、血液中の溶解パターンなど生物学的同等性試験を課し、合格したものだけを認可している。

 それでも、医師の間で不信感は根強く、日本医師会は「後発薬には劣るものもある」と指摘する。日本の後発薬シェアは約17%(06年)で、6割前後の米国、カナダ、英国、ドイツと比べても著しく低い。国は後発薬シェアを30%に増やす方針で、厚生労働省医療課の磯部総一郎・薬剤管理官は「生物学的同等性試験は欧米と同じく厳しいもの」と強調する。

 実際の臨床現場での安全性や効果も気になるところだが、仙台逓信病院(仙台市)はこの7年間で約100品目を後発薬に切り替え、東北大学と協力し、先発薬と後発薬の比較試験を行っている。結果は、たとえば、高脂血症薬では、どちらも悪玉コレステロール(LDL)を下げるなど差はなかったという。

 同病院の高橋将喜・薬剤部長は「先発薬だと1日3回の服用を2回にして節約しようとする患者もいるが、後発薬だと医師の指示通り服用する効果もあった」と評価する。

 ■入手法が容易に

 病院が自発的に後発薬を出すケースは少ない。後発薬を希望する場合は、患者が医師に伝え、処方せん欄にある「後発医薬品への変更可」に署名してもらい、薬局で入手する手順が一般的だ。

 医師に言いにくいときは、日本ジェネリック医薬品学会が作成した「ジェネリック医薬品お願いカード」(インターネットでダウンロードできる)を病院の窓口で見せてもよい。

 ただし、来年4月からは後発薬への変更が不可の場合のみ医師が署名するように処方せんの様式が改められるため、いま以上に後発薬が入手しやすくなる。

 後発薬の取り扱いに積極的な薬局を選ぶのも手だ。日本ジェネリック医薬品学会は、後発薬を積極的に扱っている病院や薬局に「ジェネリック医薬品推奨マーク」を交付している。これも目安になる。マーク取得店は全国でまだ10店と少ないが、申請中が約300店あり、今後は増えそうだ。

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 ◇ジェネリック医薬品

 特許の切れた先発薬と同等の有効成分を使って製造される後発薬。ジェネリックは「一般的な」という意味の英語で、かつてはゾロゾロと出てくるのでゾロ薬ともいわれた。開発費用が先発薬ほどかかっておらず、価格は先発薬の約7~2割と安い。後発薬メーカーは約240社。認可された後発薬は約6000品目あり、先発薬(約3000品目)より多い。

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 <先発薬と後発薬の価格差>

 ■高脂血症薬のメバロチン(10ミリグラム)

 =先発薬価格  131.4円

・プラメバン錠   43.4円

・プラバメイト錠  51  円

・プラバピーク錠  52.7円

・プロバチン錠   59.1円

・アルセチン錠   65.4円

・プラバチン錠   71.4円

・プラバスタン錠  79.4円

・マイバスタン錠 100.9円

 ■血管拡張薬のアダラートL錠(10ミリグラム)

 =先発薬価格   20.6円

・アロトップL錠   6.4円

・キサラートL錠   6.4円

・ニフェスロー錠   6.4円

・ラミタレートL錠  6.4円

・カサンミルS錠   6.4円

 ■糖尿病薬ベイスンOD錠(0.2ミリグラム)

 =先発薬価格        49.9円

・ボグリボースOD錠タイヨー 30.5円

・ボグリボースOD錠QQ   25.1円

・ボグリボースOD錠ケミファ 25.1円

・ボグリボースOD錠サワイ  34.5円

・ボグリボースOD錠MED  35  円

・ボグリボースOD錠トーワ  35.3円

 ■胃かいよう薬のガスターD錠(20ミリグラム)

 =先発薬価格       62.3円

・ファモチジンD錠KOBA 20  円

・ストマルコンD錠     23.7円

・ガモファーD錠      26.7円

・ガスリックD錠      28.4円

・ファモガストD錠     40.2円

毎日新聞 2007年12月8日 東京朝刊

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