巨大ツリーのイルミネーションが岡山の夜を彩る今ごろになると、「サンタ追跡」のサイトが楽しみになる。
サイトはクリスマスイブの二十四日、世界を巡るサンタの居場所を刻々伝え、コンピューターグラフィックス(CG)でサンタの姿も見せる。過去、エッフェル塔や富士山を背景に空を行くそりの映像が楽しかった。今年はどんな趣向だろう。
サイトは北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が設けている。トナカイの真っ赤な鼻が出す熱をミサイル警戒システムが感知し、居場所を特定する設定が愉快だ。お堅い米軍事組織が、イブに世界の子どもへ夢を届ける。
きっかけは五十数年前、小売店の広告に「サンタと話せる電話番号」が誤って載ったことだ。その電話はNORADの前身の組織につながり、職員が子どもたちの夢を壊さないよう応対した。以来イブの日に電話を受け付け、現在は日本語版もあるウェブサイトが主役になった。
ユーモアと善意。乱射事件も起きる米国だが、人々のこうした一面は見習いたいと思う。サイトには八歳の少女バージニアの手紙の紹介もある。一八九七年、彼女が有力紙「ザ・サン」に手紙で尋ねた。「サンタさんは本当にいるの?」。
「もちろん、サンタさんはいます。愛や思いやりや献身が、確かに存在するように」。サン紙は心温まる社説で応えている。