インタビュー ミツ役・貫地谷しほり “強さ”と“明るさ”全開で演じきりました

ミツの“強さ”の根っこを実感

 ミツのことを一言で表すなら“強い娘”ですね。最初に台本を読んだ時もそう思いましたし、内野(聖陽)さんとミツについて話していても必ず出てきたキーワードが“力強さ”でした。
 勘助と平蔵がもみ合って草がゆの入った器をひっくり返してしまうというシーンで、ミツは『あにょするだ、もったいにゃ・・・』と言いながら、床にばらまかれたかゆをはいつくばって食べたんですよ。演じながらも『ミツってすごいな』と圧倒されたし、隻眼で異形の勘助を最初から怖がらなかった理由もわかったような気がしました。
 ある意味で最低レベルの生活でしょう。だからこそ人間が生きていくうえで本当に必要なこと、大事なことがわかっていた。勘助の外見にとらわれず本質を見抜くことが出来た。そこにミツの強さの根っこがあるんだなって思いました。
 ミツを演じていて難しいとか、苦痛を感じたことはほとんどありませんでした。ただ一つ、第1話で武田の物頭、赤部下野守のうそを暴くために、着物の前をぱーっと広げて『はれもの、ねえら』と足をむき出しにして見せたシーン。台本で読んでいた時は、特別なことだと思わなかったのに、いざ現場で演じようとしたらすごく難しくて・・・。
 着物を広げるのがいやだとか、そういうことではないんです。『思い切りよくやるように』と演出スタッフから言われ、自分でも瞬発力が勝負だと思っていたのに、そこまで気持を持っていくのに時間がかかってしまいました。
 それにしても勘助が甲府に帰ってきて、ミツはきっとこのまま『幸せ、まっしぐら』だと信じていたんですよね。全然、不安なんて感じていなかったと思いますよ。それなのに悲惨な最期になってしまって・・・。私も放送前にビデオをいただいたのですが、見るのが恐くてまだ見ていません(笑)。

内野さんの勘助が最高!

 私は演技プランを細かく練ったり、いろんなことを意識して役作りをするということはあまりしません。それより、現場で感じるものを大切にして演じたいと思っているんです。
 今回もそんな気持でクランクインしたのですが、そこには私の想像なんて吹っ飛ぶくらい(笑)、素敵な勘助さんが待っていました。『ああ、勘助ってきっとこんな人だったんだろうな』と思わせてくれた。もう、それだけでミツの気持になれたので、わざわざバックグラウンドを探る必要もなかったんです。
 だからすごく恵まれていたと思います。内野さんは私がどう演じても素晴らしいお芝居で返してくれる方だし、私が少しでもシーンに違和感を覚えると共演者やスタッフが『ここは、こうしよう』と、みんなで考えてくれた。大河ドラマは初めてなのに本当に皆さんに助けられて楽しく出来ました。
 そんな中で、内野さんの作品への取り組み、芝居に対する姿勢を間近で見させていただいたことは大きかったですね。ドラマの現場では時間の制約もあるので、あるレベルを達成していれば『OK』としてしまう部分もあります。でも、少なくとも内野さんの中には、『俺は絶対にレベルを下げない』というこだわりがあり、『どんな状況でもそこで最大限の努力をする』という強い思いが見ていてよくわかるんです。そこが本当に素敵だなと思いました。
 私も30歳くらいになった時、そういう役者さんになっていたいですね。あ、内野さんは今38歳なんですよね。じゃ、私は40歳までを目標にします(笑)。

 
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