ここまで若者の間で大麻汚染の広がりが深刻化しているとは‐。
大麻取締法違反の疑いで福岡市内の予備校、専修学校の男子学生ら5人が逮捕され、九州大の男子学生ら2人が書類送検された。乾燥大麻を持っていたり、紙巻き大麻を1本1000円から2500円で売買したりした疑いである。
先月、大学ラグビーの雄、関東学院大のラグビー部員2人が同法違反の現行犯として逮捕されたことは、まだ耳に新しい。合宿所の自室で大麻を栽培していた疑いだ。同部を頂点にまで育て上げた春口広監督は、今月になって引責辞任しなくてはならなかった。
九州では2001‐03年、九州産業大(福岡市)の学生や卒業生14人が大麻を栽培、売買していたとして逮捕されたのをはじめ、複数の大学・短大で学生の逮捕者が出たことがあった。
大麻はアサ科の一年草で、穂や葉は乾燥大麻、樹液は大麻樹脂などになる。吸引すると興奮状態になったり意識障害を起こしたりする。
長期間吸っていると幻覚や妄想などの精神障害が起き、無気力症や知能低下などにつながって、まともな社会生活ができなくなる恐れがあるとされる。
先進国の中で、日本は取り締まりがひときわ厳しい。大麻取締法によって、所持者は懲役5年以下(営利目的は懲役7年以下)、栽培したり密輸したりした場合は懲役7年以下(営利目的は懲役10年以下)の刑罰が科される。
今回、逮捕、書類送検された7人は「受験勉強のストレスから逃れたかった。気分転換のために興味本位で吸った」などと動機を述べているという。大麻が、心身の健康上も司法的な制裁上でも重大な結果を招く危険な薬物であることを肝に銘じてほしい。
大麻取締法は、許可を得ない大麻の栽培、売買、輸出入、所持、使用、研究などを処罰の対象にしているが、種子そのものは対象外だ。この点が同法の弱みで、不法栽培の根絶を難しくしている。福岡市の繁華街で大麻の種子が販売されている問題も指摘されている。
関東学院大ラグビー部員による大麻栽培事件を捜査している神奈川県警は最近、発芽防止の熱処理をしていない大麻の種を輸入雑貨店に卸したとして、大麻取締法違反(栽培)ほう助容疑で雑貨店運営会社などを家宅捜索した。大麻の種子の熱処理を義務付けている関税法などを初適用する方針という。
発芽可能な大麻の種子が出回り、たやすく入手できる状況がある限り、不法な栽培や所持、売買が後を絶つことはない。栽培を目的にした大麻種子の流通の元を断とうとする神奈川県警の捜査方針は、1つの有効な手法ではないか。
大麻だけが問題ではないだろう。さまざまな薬物が若者を誘惑する危機的な状況を、どうにかしなくてはならない。
=2007/12/08付 西日本新聞朝刊=
大麻取締法違反の疑いで福岡市内の予備校、専修学校の男子学生ら5人が逮捕され、九州大の男子学生ら2人が書類送検された。乾燥大麻を持っていたり、紙巻き大麻を1本1000円から2500円で売買したりした疑いである。
先月、大学ラグビーの雄、関東学院大のラグビー部員2人が同法違反の現行犯として逮捕されたことは、まだ耳に新しい。合宿所の自室で大麻を栽培していた疑いだ。同部を頂点にまで育て上げた春口広監督は、今月になって引責辞任しなくてはならなかった。
九州では2001‐03年、九州産業大(福岡市)の学生や卒業生14人が大麻を栽培、売買していたとして逮捕されたのをはじめ、複数の大学・短大で学生の逮捕者が出たことがあった。
大麻はアサ科の一年草で、穂や葉は乾燥大麻、樹液は大麻樹脂などになる。吸引すると興奮状態になったり意識障害を起こしたりする。
長期間吸っていると幻覚や妄想などの精神障害が起き、無気力症や知能低下などにつながって、まともな社会生活ができなくなる恐れがあるとされる。
先進国の中で、日本は取り締まりがひときわ厳しい。大麻取締法によって、所持者は懲役5年以下(営利目的は懲役7年以下)、栽培したり密輸したりした場合は懲役7年以下(営利目的は懲役10年以下)の刑罰が科される。
今回、逮捕、書類送検された7人は「受験勉強のストレスから逃れたかった。気分転換のために興味本位で吸った」などと動機を述べているという。大麻が、心身の健康上も司法的な制裁上でも重大な結果を招く危険な薬物であることを肝に銘じてほしい。
大麻取締法は、許可を得ない大麻の栽培、売買、輸出入、所持、使用、研究などを処罰の対象にしているが、種子そのものは対象外だ。この点が同法の弱みで、不法栽培の根絶を難しくしている。福岡市の繁華街で大麻の種子が販売されている問題も指摘されている。
関東学院大ラグビー部員による大麻栽培事件を捜査している神奈川県警は最近、発芽防止の熱処理をしていない大麻の種を輸入雑貨店に卸したとして、大麻取締法違反(栽培)ほう助容疑で雑貨店運営会社などを家宅捜索した。大麻の種子の熱処理を義務付けている関税法などを初適用する方針という。
発芽可能な大麻の種子が出回り、たやすく入手できる状況がある限り、不法な栽培や所持、売買が後を絶つことはない。栽培を目的にした大麻種子の流通の元を断とうとする神奈川県警の捜査方針は、1つの有効な手法ではないか。
大麻だけが問題ではないだろう。さまざまな薬物が若者を誘惑する危機的な状況を、どうにかしなくてはならない。
=2007/12/08付 西日本新聞朝刊=