今回の執行した死刑囚の氏名の公表、さらには死刑そのものについて、被害者の遺族たちはどのように考えているのか、2人の遺族を取材しました。
妻を殺害されたことをきっかけに、全国犯罪被害者の会を立ち上げた岡村勲弁護士。今回の氏名公表について、こう話します。
「(死刑執行は)別に悪いことするわけじゃないんです。だから堂々と、何月何日に誰それを処刑した、と公表してしかるべき。被害者の悔しい思いが晴らされたということになって、被害者にとっては1つのなぐさめになるんじゃないでしょうか」(全国犯罪被害者の会、岡村 勲 代表幹事)
氏名が公にされ、死刑が執行されることで、被害者遺族のいやしになるといいます。
一方で、そうは思えないという被害者遺族もいます。原田正治さんは弟・明男さんを殺害されました。
「被害者の気持ちを考えた上で実名公表、で死刑を執行したわけですよ。実名公表をして被害者の人たちは本当に喜んでいるのか、いやされるのか、そういう問題じゃないと思うんです」(原田正治さん)
1983年、弟の明男さんは勤務先の社長・長谷川元死刑囚らに殺されました。獄中の長谷川元死刑囚からは何通も手紙が届きました。最初は捨てていましたが、いつしか読むようになりました。そして原田さんは、長谷川元死刑囚と拘置所で面会することを決めました。事件から10年が経っていました。
「『なんでうちの弟なのか』と聞きたかった。『なんでうちの弟じゃなきゃいけなかったのか。ほかの人でも良いじゃないか・・・』というふうな思いがあった。その思いを彼の口から聞きたかった。謝罪も受けたかった」(原田正治さん)
だが、本当の心の内を聞き出す前に、面会ができなくなったといいます。死刑確定後、許可されなくなったのです。
原田さんは、長谷川元死刑囚が獄中で描いた絵の展覧会を開くなど、死刑を阻止しようと活動しました。
「向こうは謝ることでいやしをおぼえる。我々はそれを聞くことによって気持ちが和らぐ。一つのいやし観」(原田正治さん、2003年)
法務省に執行停止の上申書も書きました。しかし6年前、長谷川元死刑囚の死刑が執行されました。
Q.もし執行されずに、あのまま面会を続けていれば、今どうなっていた?
「少なくともね、本当のことが彼の口から聞けるんじゃないかなと思った」(原田正治さん)
原田さんは被害者遺族でありながら死刑廃止を訴え、今も活動しています。
「彼(長谷川元死刑囚)がいない今、憎しみを持っていく場所がないんです。“真実を知りたい”“本当のことを知りたい”ということで自分の憎しみそのものを彼にぶつけることによって、被害者の一遺族としていやされることがある」(原田正治さん)
被害者遺族の中にも、死刑に関しては様々な思いが交錯しています。(07日23:21)