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心肺停止の男児、母が救う 蘇生術「習ったばかり」

2007年12月07日19時02分

 大阪市で9月、入浴中に心臓が突然止まった男児が、母親から人工呼吸などの心肺蘇生処置を施され、無事一命を取り留めることができた。救急車が到着したのは約15分後。母親はその間、2週間前に受けた心肺蘇生法の講習を思い出しながら、父親と交代で処置をした。治療にあたった医師は「母親の処置がなければ助かっていなかった。蘇生処置がうまくいった珍しい例だ」と話している。

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天翔ちゃんへの心肺蘇生処置を再現する西村将人さん、真尋さん夫妻=大阪市天王寺区で

 大阪市天王寺区の西村天翔(そらる)ちゃん(4)は、先天性の心臓の異常「ファロー四徴症」などの障害があり、通院治療を受けている。

 9月19日午前2時半ごろ、父将人(まさと)さん(32)が自宅の浴室で天翔ちゃんの体を洗っていると、天翔ちゃんはいきなり息苦しそうな表情に急変。その直後、人形のようにぐったりしてしまった。

 「息してない!」

 将人さんの大きな叫び声で、寝ていた母真尋(まひろ)さん(32)がとび起き、天翔ちゃんを寝室まで運んだ。胸に耳をあてたが、心音は聞こえなかった。

 〈そうだ。2回と30回でやればいい――〉

 真尋さんの頭をよぎったのは、2週間前、かかりつけの大阪市立総合医療センター(大阪市都島区)で受けた心肺蘇生法の講習会だった。救急医と看護師がマネキンを使い、人工呼吸と胸骨圧迫(心臓マッサージ)の方法を丁寧に教えてくれた。「とにかく2回人工呼吸して30回胸を押すこと」。医師の言葉が鮮明に残っていた。

 「1、2、3、4、5、6……」

 真尋さんは天翔ちゃんの胸を押しながら声を出して30回数え、口で2回息を吹き込んだ。将人さんと交代しながら、汗だくになって15分ほど繰り返すと、119番で呼んだ救急車が到着。救急救命士に引き継ぎ、救急車の中でも心肺蘇生処置が続けられた。

 午前3時16分、救急車が同医療センターに到着すると、医師が天翔ちゃんに気管挿管して吐物を吸引。同29分に自発呼吸が再開した。

 入院2日後にわかった検査結果はすべて問題なし。真尋さんは主治医から「呼吸が止まった直後から蘇生処置をしていなかったら助かっていなかった。後遺症なく回復できたのは奇跡のようです」と告げられた。

 真尋さんは振り返る。「友人に誘われ、たまたま受けた講習だった。今になって初めてその大切さを実感した」

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