中国人実習生、「過酷な労働」させた会社など提訴…熊本地裁
提訴後の記者会見で、過酷な労働実態を訴える(左から)時、谷、劉、杜さん(6日、熊本市内で)
外国人研修・技能実習制度で来日し、熊本県天草市の縫製会社2社で働いていた中国人女性4人(20〜23歳)が6日、劣悪な条件で働かされ、人権を侵害されたとして、両社と1次受け入れ機関「プラスパアパレル協同組合」(熊本県小国町)、同制度を運営する財団法人国際研修協力機構(JITCO)を相手取り、未払い賃金や慰謝料など総額約3578万円の支払いを求める訴訟を熊本地裁に起こした。同制度は不正雇用の温床と指摘されているが、JITCO福岡駐在事務所によると、制度を巡る提訴は九州で初めて。
訴状によると、4人は昨年4〜7月に来日。同一敷地にある縫製会社「スキール」「レクサスライク」(両社とも8月末に廃業)の工場で、最初の1年は研修生、今年8月までは実習生として働いた。制度では研修生の時間外労働は禁じられているが、最低賃金以下の報酬で残業や深夜・休日労働をさせられた。未払い賃金は1人約345万〜371万円にのぼるという。
さらに経営者から旅券、預金通帳、印鑑を取り上げられ、口座から勝手に預金を引き出された。協同組合とJITCOは両社の不法行為を知りながら指導、監督しなかったとしている。
両社を巡っては、天草労働基準監督署が8月21日、立ち入り調査して帳簿などを調べ、未払い賃金を支払うよう行政指導。提訴した4人を含む中国人女性6人から9月、労働基準法違反(強制労働の禁止)の告訴を受理し、関係者から事情を聞いている。
さらに県警は今月4日、両社の実質的経営者が女性名義の通帳から無断で預金を引き出したとして有印私文書偽造、同行使容疑で熊本地検に書類送検した。
訴えについて経営者の家族は「本人がいない」、協同組合は「理事長は体調を崩して不在」。JITCO本部(東京)の神崎慎一郎企画調整課長は「大部分の受け入れ機関ではきちんとやっているのに残念。対応を考えたい」としている。