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一人芝居を上演し、命の大切さ訴え続ける武石さん


一人芝居で人権問題の啓発に取り組む武石博さん(11月28日、福岡市西区で)=貞末ヒトミ撮影

 10日までは人権週間。福岡市のハローワーク職員、武石博さん(51)(福岡市城南区)が、差別やいじめなどの人権問題や命の大切さを訴える一人芝居を9年前から続けている。自ら13本の台本を書き、自治体や学校の啓発行事、企業の研修会などでの上演は150回を超えた。「不当な差別やいじめを受けた人の悲しみや、若くして病気で亡くなった人の話を演じ、生きることや人を愛することの大切さを訴えたい」。そんな思いが原動力だ。

 「私、もっと生きていたい!」。11月下旬、福岡市西区の「人権のまちづくり館」のステージで、武石さんが叫んだ。

 15歳で体の自由が徐々にきかなくなる難病にかかり、25歳で亡くなった女性の闘病生活や、薬害によるエイズ感染で15歳で亡くなった少年の話を題材にしたオリジナルの一人芝居だ。

 難病の女性の芝居では約40分間、主人公や両親、医師ら何役もこなした。障害が重くなり、通っていた高校の教師から養護学校への転校を勧められる場面や、通りがかりの人から心ない言葉を投げかけられたりする場面では、約50人の聴衆が涙をぬぐいながら芝居に見入った。

 1997年ごろ、福岡県内の大手企業社員が、息子の結婚相手が同和地区出身であることを理由に差別的な発言をしたことが問題化した。「出自によって不当な扱いを受けることの理不尽さを伝えなければ」。同和問題の啓発担当職員だった武石さんはそう思い立った。知人が教育をテーマに一人芝居に取り組んでおり、舞台に聴衆を引き込む演劇の説得力に着目した。

 地元企業を集めた人権啓発講習会で、資料を基にした説明に加えて、県外で起こった就職差別の事例を芝居にし、講習の間に織り込むようになった。独習での動きやセリフはぎこちなかったが、「分かりやすい」「感動した」と口コミで評判になった。

 障害者差別、いじめ、薬害エイズなど様々な社会問題に関心が広がり、少しずつ台本が増えた。体験者から話を聞き、本人の了解を得て台本に仕上げてきた。浴室や車の中で演技を磨いた。

 管理職となり担当職務が変わったため、今は公務ではなく、ボランティアで主に夜や休日に演じている。職場の上司も「職員が地域に密着した社会活動を行うのは喜ばしいこと」と評する。

 涙、怒り、喜び……。芝居で再現してみせることの力強さを実感している。「言葉や文章で『差別はいけない』と唱えるより、芝居を通して当事者の気持ちを知ってもらえる。人を大切にすることの素晴らしさを伝えていきたい」と武石さんは話している。



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