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地元が「景観費」要求 中国の遺棄兵器処理
中国に遺棄された毒ガス兵器の処理施設建設をめぐる日中間の交渉で、中国の地元の吉林省敦化市林業局が周囲の景観が損なわれたとして「景観費」補償の名目で「数千万元(1元は約15円)」を日本側に新たに要求、交渉が長引く一因となっていることが分かった。中国外交筋が7日、明らかにした。
処理施設が建設される同市ハルバ嶺は山奥で「景観費補償まで求めるのは行き過ぎ」との声が中国外務省内でも出ている。日本側の内閣府遺棄化学兵器処理担当室は「交渉の中身についてはコメントできない」としている。
建設予定地は保安林に指定されているため用地確保には伐採する森林の補償などにも経費が必要とされる。しかし中国外交筋は「誰も住んでいないところで景観費は筋が通らない。地元に対し、要求を取り下げるか、金額を下げるよう働き掛けている」と話した。中国側は外務省、軍、地元など複数の担当部局の利害が絡み、要求が一本化できていないようだ。
施設は30万〜40万発と推定される毒ガス兵器を回収後に無害化処理するもので、化学兵器禁止条約に基づいて日本政府がすべての必要な資金、技術を提供する。総工費は約3000億円ともいわれる。
処理の期限は5年延長され2012年。しかし交渉がまとまらないため当初予定されていた施設の年内着工は不可能。同筋は「来年着工しても施設完成は11年ごろで、12年までに処理事業を終えるのは困難だろう」と指摘した。(共同)