2008年4月に実施される診療報酬改定に向けて、全体の改定率をめぐる調整が大詰めを迎えている。個別項目の点数配分の前提となる診療報酬本体の改定率は、予算編成の過程で年末に内閣が決めることとなっているが、調整の行方は? これまでの経緯と現状を整理してみた。(兼松昭夫)
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改定率めぐる調整、年末に向け本格化
――新聞紙上などで「診療報酬改定」という言葉が頻繁に出てきている。
診療報酬とは、患者に提供した医療の対価として、社会保険診療報酬支払基金などの審査・支払機関が医療機関に支払う報酬のことだ。通常は2年に1回のペースで見直し(改定)がある。次の改定が来年4月に実施される予定で、報酬を増やすかどうかの議論が今、大詰めを迎えている。
――報酬を増やすかどうかは誰がどうやって決める?
診療報酬改定の基本方針と全体の改定率をまず決めて、その後に、医療のどの項目を重点評価するかを決める形がとられている。
このうち基本方針は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会(社保審)で審議して、改定率は予算編成の過程で内閣が年末に決めることになっている。
これらを踏まえた具体的な項目ごとの点数配分は、厚生労働大臣の別の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が決める。
基本方針は11月に固まった。具体的には、病院で働く「勤務医」の不足に歯止めをかけるため、勤務医の負担軽減策や、産科・小児科を重点評価することなどが決まっている。
今、大詰めを迎えているのが改定率をめぐる調整だ。中医協での点数配分をめぐる議論は年明けにスタートして、2月には決着するとみられている。
――改定率はどんな方向で決着しそうか?
財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会は、11月にまとめた来年度予算の建議の中で、98年度以降の診療報酬の引き下げ幅が同じ時期の賃金・物価の動向を3.6%程度上回っている点を指摘して、次の改定での本体部分の引き下げを主張した。
だけど診療報酬本体は2002年度、06年度に引き下げられている(04年度は据え置き)。特に06年度の下げ幅は1.36%(薬価を合わせた診療報酬全体では3.16%)と史上最大だった。このため日本医師会などの関係団体は「医療崩壊を促進しかねない」などと主張し、逆に大幅なプラス改定を求めている。
中医協が11月、次の診療報酬改定について「マイナス改定を行う状況にはない」とする意見を舛添厚生労働大臣に提出するなど、引き下げ慎重論が強まっている。厚生労働省も、現状でのマイナス改定には慎重な姿勢だ。
――背景には、増えすぎる医療費をどう抑制するかという問題がありそうだ。
そう。高齢化が本格化するなか、何の対策もとらなければ、医療費が増えることは避けられない。これを自然増と呼んでいる。
政府は、国債の発行や元利払いなどを含まない基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2011年度までに黒字化させるため、医療費などの社会保障費をこの間に11兆円削減することを目標にしている。これを達成するため、来年度予算で自然増のうち2,200億円分を削るよう厚生労働省に求めている。
このため、2010年の改定でも同じような議論が繰り返される可能性がある。
当面は08年度の目標達成が課題だ。厚生労働省は夏の段階で、目標達成のための具体策として後発医薬品の使用促進と薬価の引き下げを挙げていた。だけどこれだけでは達成できない。そのため、残りの部分は年末までに検討するとしていた。
有力な候補が、政管健保の国庫負担を削減して、削減した分を健保組合などに肩代わりさせようという案だ。仮にこれが実現せずに代案も示せなければ、「診療報酬引き下げやむなし」という主張が勢いを強めることもありえる。
更新:2007/12/07 キャリアブレイン
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