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【健康】

自己管理<上>  高血圧の薬 合併症のリスク下げる

2007年12月7日

 自覚症状がないまま脳卒中や心臓病、腎臓病など、命にかかわる病気になるリスクが高まっていく高血圧。「サイレント・キラー(静かなる殺人者)」と呼ばれるゆえんだ。成人の三分の一は高血圧といわれるほど多いが、血圧コントロールは十分されていないのが現状だ。今月は降圧薬を中心に、高血圧について取材した。 

 名古屋市内の主婦(65)はかかりつけ医に「高血圧」と診断され、降圧薬を処方された。しかし、薬を飲むたびに、震えが起きたり体がだるくなったり。医師に相談しても取り合ってくれず「薬を飲まないと血圧が下がらないけど、このまま飲み続けられない」と悩む。

 病院の計測で収縮期(最高)血圧140、拡張期(最低)血圧90のいずれか一方でも超えると、一般的に高血圧とされる。高血圧が長く続くと、血管を傷つけ動脈硬化が進み、脳卒中、心疾患を合併しかねない。治療ガイドラインでも、生活習慣の改善で血圧が下がらない場合、薬を使った積極的降圧を勧めている。

 一般に使われる血圧の薬は主に六種類(表参照)。横浜相鉄ビル内科医院(横浜市)の森壽生(ひさお)院長らが神奈川県内の開業医らを対象に行った調査では、最も使用されていたのはカルシウム拮抗(きっこう)薬で、次がアンジオテンシン2受容体拮抗薬。「降圧薬の普及と進歩は著しく、現在、降圧目標に達せられないケースはほとんどない」と森院長。薬の選択肢も多く、冒頭の女性の場合も「副作用がない薬も選べる」と話す。

 降圧薬の進歩の一方、必ずしも血圧がコントロールされていないのが現状だ。高血圧の人は全国で約三千五百万人と推測されるが、高血圧の認識のある人はその半分で、うち医師にかかっているのは半分。その中で血圧が管理できているのは半分といわれる。

 名古屋市立大大学院(臨床病態内科学)の木村玄次郎教授は「そもそも高血圧治療の最大の目的は脳卒中、心疾患といった合併症を防ぐこと。合併症の最大のリスク因子である高血圧の怖さが認識されていない」と現状を憂う。

 治療は生涯にわたり、患者自身の自己管理が求められるが、自覚症状がほとんどないため「薬さえ飲んでいれば安心」と医師任せにしたり、途中で治療をやめたりする人も少なくない。医師側も一人一人の病態にあわせて降圧目標を設定し、QOL(生活の質)にも配慮しながら治療の継続を働きかける必要があるが、忙しさから十分にできていないこともあるという。

 しかし、森院長は「患者の意識が高まるほど、血圧がコントロールされる」と強調。同院では、初診時に十分に説明するなどし、患者の73%が降圧目標を達成するが、家庭で血圧を測るなど意識の高い患者では83%に上るという。

 

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