文科相「承知していない」/軍命明記回避
【東京】渡海紀三朗文部科学相は七日午前の閣議後会見で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で教科用図書検定調査審議会が文科省を通じて教科書会社に伝えた「指針」の内容について、「出されたかどうか承知していない」と述べ、言及を避けた。
同省の教科書調査官は各社に「指針」を示し、「軍から直接命令した事例は確認できていない」と伝え、軍の命令を明記しないよう求めたという。「指針」の妥当性について渡海文科相は「通常の検定の範囲で(審議委員が)学問的、専門的な調査をする中で行われていると理解してほしい」とした。
審議会が結論を出す時期が遅れていることには「今やっている作業は来年の春の教科書に間に合うようにお願いしており、審議会の先生もそれを念頭に審議していると思っている」と述べた。
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仲里議長、指針を批判
沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍強制を削除した教科書検定問題で、教科用図書審議会が「指針」をまとめ、文部科学省が「軍の命令」を明記しないよう教科書会社に求めていたことについて、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長は七日午前、「(軍命否定は)戦争を知らない人が言うこと。あのような、今死ぬか殺されるか、あるいは生きるかという、生と死のがけっぷちにある状況の中で、証拠がある。(軍命を明記しないという指示は)ナンセンスでばかげたこととしか言いようがない」と批判した。
その上で「(軍命を示す)証言ははたくさんある。検定意見の撤回と記述の回復ということは、いささかも揺るぎはないし、その実現に向けて、今後も頑張っていきたい」と話した。
一方、仲村守和教育長は教科用図書検定調査審議会の指針について、「内容について詳しいことは承知していない」とした上で、「県教育委員会としては検定意見の撤回と記述の回復がなされ、来年度も記述が回復された教科書で高校生が学習できることを期待している」と述べた。同日の県議会一般質問で、兼城賢次氏(護憲ネットワーク)に答弁した。
知事「大変失礼」/藤岡氏の議長批判
新しい歴史教科書をつくる会の藤岡信勝拓殖大教授が先月末、県庁記者クラブで会見し、沖縄戦時に日本兵から毒のおにぎりを渡されたとする仲里利信県議会議長の証言は「作り話」と批判したことについて、仲井真弘多知事は七日午前、県議会の一般質問で見解を問われ、「報道の通りであったとすれば大変失礼で理解不可能。大変疑問に感ずる発言」と批判した。
仲村守和教育長も「(仲里議長の発言は)『歴史は正しく語り継がなければならない』との強い思いから、自らの沖縄戦体験に基づいて語られたものだと思う。つくる会会長の発言が報道の通りであれば極めて疑問であり、理解し難い」と同様に批判した。当山全弘氏(社大・結連合)への答弁。
仲里議長はこれまでに「壕の中で泣きやまない幼い妹らを殺すよう、日本軍兵士から毒入りのおにぎりを渡された」と証言している。