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電動車いす 安全運転で

2007年12月07日

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販売店の店頭に並ぶ電動車いす=富山市掛尾町の「スズキ自販富山」で

事故増え指導など対策
南砺で講習会・旗を配布

 足腰が弱くなった高齢者の重要な「足」としてよく見られるようになった「シニアカー」。3輪や4輪の電動車いすだが、免許もいらず、簡単に運転できる気軽さから、県内では山間部を中心に利用者は増加中だ。だが走行中の事故も絶えず、11月に朝日町でシニアカーの女性が道路から転落し、死亡した。利便性と事故防止をどう両立させるか。南砺市では、講習会などの対策も進み始めている。(高野遼)

 シニアカーの操作は簡単だ。レバーを押すと進み、離すと止まる。ハンドルで進路を決め、速度はダイヤルで調整。かごが付いて荷物も運べる。

 電動車いす安全普及協会(電安協・浜松市)によると、利用者の平均年齢は80歳ぐらい。90年ごろから普及し始め、00年から介護保険法でレンタルできるようになったこともあり、急増した。

 だが普及とともに電動車いすの交通事故の発生件数も増加。警察庁のまとめでは、97年に全国で130件だったが、05年は2倍以上の281件になった。06年は過去10年で初めて減少に転じたが、依然として258件。死亡事故も00年以降、全国で毎年10件前後起きている。

 11月15日、朝日町の県道で、シニアカーで近所へ買い物に出た女性(79)が、道路脇から約2メートル下に転落して死亡しているのが見つかった。現場は歩道もガードレールもなく、道幅は約7メートル。車がちょうどすれ違える程度の道路を、車は勢いよく走る。女性は、その道路からシニアカーごと転落したとみられる。

 事故を招く要因は何か。電安協はいくつかの要素をあげる。

 事故の発生場所は、道路環境が十分とはいえないことが多い。シニアカーの利用者が、交通の便が悪く歩道の整備が行き届かない地方に多いことが、地方の事故につながっているという。

 運転する高齢者の意識も問題のようだ。シニアカーは道路交通法の規定で、時速6キロまでしか出せず、30メートルの道路を渡るのに18秒かかる。電安協の小池敏明事務局長は「素早く動くことができたときの感覚で乗る人が多い」と指摘する。無理な横断は事故につながりやすく、交差点や踏切内での事故が大半だという。

 運転免許を持たない高齢者が多く、交通ルールへの理解も乏しい。富山市内のシニアカーの販売員は「車道の右折レーンを走っているのを見かけたこともある。安全運転は、販売時にしつこいほど注意しているのに……」と頭を悩ませる。

 そんな中、利用者が約370人いる南砺市はすでにシニアカーの安全対策に取り組んでいる。

 同市は02年、「電動車いす交通安全倶楽部」を発足。市内各地に警察官らが出向いて、計28回の講習会を開いた。また車より目線が低いシニアカーを目立たせるため、車いすに付ける約1メートルの反射材つきの「黄色い旗」を考案。無料配布して普及に努め、全国で広まり始めているという。

 メーカー側も事故防止には積極的だ。警察と連携して安全講習会を開くほか、販売店に社内の資格を得た「安全指導員」を置くメーカーも。高齢者宅へ「出張試乗」に赴き、運転能力や近所での危険な場所を確認する。「夜間の運転が危ない」との声があり、2年ほど前からはほぼすべての製品に「夜間用ライト」が付けられた。

 電安協の小池事務局長は「シニアカーは高齢者の重要な足。高齢者が自立して社会に出て行く助けになる。車社会と同じように事故を防ぎながら利便性も実現できるようにしたい」と話す。

◇キーワード 電動車いす 
 通称シニアカー。ハンドル付きで、3輪と4輪があり、家庭用コンセントで充電できる。道交法で、縦の長さ120センチ、横幅70センチ、高さ109センチ以内と決まっており、価格は30万円前後。同法では「歩行者」扱いのため、年に数件起きる転落などの自損の死亡事故は交通事故とはみなされない。

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