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消費税率引き上げの必要性を明記した政府税調の答申など
【社会】死刑執行、氏名を初公表 法務省 藤間確定囚ら3人2007年12月7日 夕刊 法務省は七日、確定死刑囚三人の死刑を執行したと発表した。執行されたのは藤間静波(47)、府川博樹(42)=東京拘置所、池本登(74)=大阪拘置所=の三死刑囚。鳩山邦夫法相の執行命令は初めてで、福田内閣での執行も初めて。法務省は、これまで執行した人数のみを公表してきたが、被害者感情を重視、執行された死刑囚の名前と執行場所を初めて公表した。三人が執行された前回八月以来、三カ月半での執行になった。 法務省は記者会見で「被害者をはじめとする国民から情報公開の要請が高まっており、死刑が適正に執行されていることに理解を求めるために氏名、犯罪事実、執行場所を公表することにした」との見解を示した。 同省は、長年、死刑囚の家族や他の死刑確定者に精神的苦痛を与えるとして公表してこなかった。 一九九八年十月からは執行のたびに事実と人数だけを公表してきた。 藤間被告は八二年五月、神奈川県藤沢市の女子高生=当時(16)=に交際を断られたことを逆恨みし、女子高生と妹=同(13)、母親=同(45)=の三人を刺殺。口封じのため、共犯の少年=同(19)=も逃亡先の兵庫県尼崎市で刺殺。その前年十月にも、神奈川県鎌倉市で、金銭をめぐるトラブルから知人の男性=同(20)=を刺殺した。 藤間被告は東京高裁で審理中の九一年に控訴取り下げ書を提出。効力をめぐって公判が中断したが、最高裁が無効と判断し、七年後に公判が再開。異例の長期裁判となっていた。 府川被告は九九年四月十九日、新聞の購読契約などで顔見知りだった女性=当時(65)=に借金を断られたことから逆上し刺殺。女性の母親=同(91)も殺害した。二〇〇三年一月、最高裁への上告を本人が取り下げ、死刑が確定した。 池本被告は一九八五年、徳島県日和佐町(現美波町)で、隣人ら三人を猟銃で射殺、一審は無期懲役だったが、二審で死刑を言い渡され、最高裁で死刑が確定した。 死刑執行は、法相の執行命令が出なかったことによる約三年四カ月の中断を経て、後藤田正晴法相当時の一九九三年に再開された。 情報公開など幅広い議論を<解説>「秘密主義」との批判があった死刑執行の情報開示をめぐり、法務省が方針転換を決めた背景には、情報公開の流れと、二〇〇九年から市民が刑事裁判で裁判員として参加する裁判員制度の導入がある。 裁判員制度が適用されるのは、殺人や強盗殺人など重大事件が大半を占めるとみられる。裁判員は裁判官とともに被告人が有罪の場合、死刑か無期懲役かと量刑を判断しなければならない場面も出てくる。 このため、究極の判断を迫られる国民に対して、死刑の実態を知らせないのは、司法の公正性を維持するためにも支障が出てくるとの判断が働いたようだ。 鳩山法相は「大臣が変わっても公表は続ける」と言明した。執行対象者を選ぶ基準や手続きなど開示すべき情報はほかにもある。一方で、死刑廃止を求める声や終身刑の導入などの世論もあり、死刑制度をめぐって今後どのような検討を続けていくのか、幅広い観点からの模索が必要だろう。 (社会部・佐藤直子)
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