人形を使った説明の後、不審者から声を掛けられた場面などを想定した劇に児童らも参加し、理解を深める=久留米市の大橋小

人形を使った説明の後、不審者から声を掛けられた場面などを想定した劇に児童らも参加し、理解を深める=久留米市の大橋小

 子どもがいじめ、連れ去り、性暴力などを受けそうになったとき、人権意識を持って自身を守る方法を学ぶプログラム「CAP」(Child Assault Prevention=子どもへの暴力防止)を取り入れる小学校や幼稚園などが増えている。県内にある普及団体の1つ、大木町を拠点にする特定非営利法人(NPO法人)「にじいろCAP」(重永侑紀代表理事)の取り組みを追った。

 (久留米総局・坂田恵紀)

●どう身構える

 11月下旬、久留米市立大橋小で1年生20人に、にじいろCAPのメンバーが説明を始めた。

 まずは「知らない人から声を掛けられたとき、相手に捕まらない距離を保つ」学習。メンバーを知らない人に見立て「相手の手が届かないのはこのくらい」と、3メートルほど離れて立ってみせる。次はメンバーが手にした人形と児童が向き合う。

 子どもたちはこうして相手から暴力を受けそうになったとき「イヤと言う」「逃げる」「話をする」などの対処法や身構え方を学ぶ。「大声を出して逃げる」ことも教わるが、いざとなると「どう声を出せばいいかわからない」子どもも多い。

●理解が異なる

 重永代表理事は「『○○してはいけない』と、防犯のための行動規制だけでは、実際に被害にあったときの対処法が分からず、子どもの無力感や不安感を助長する」と、具体的な行動を学ぶ必要性を強調する。

 例えば「危ない人について行ってはいけない」と子どもたちに教えても、子どもがイメージする危ない人とは「マスクやサングラス、帽子をかぶり、包丁を持って…」などと漠然とした答えに過ぎない。子どもと大人の防犯への理解や対処法がそもそも違うことも実践を通して学ぶのだ。

 さらに子どもには、やみくもに大人を避けるのではなく、きちんと話をする大人とどう受け答えをするかも教えている。

●権利に気付く

 にじいろCAPの活動の主眼はワークショップ(参加型体験学習)から、子どもには「安心」「自信」「自由」の3つの大切な権利があることを気付かせることだ。

 また保護者や教職員にも専門プログラムのワークショップに参加してもらい、日常の生活から、子どもの権利が奪われそうになったときにはいち早く気付き、他人の権利も守る意識をはぐくむ。

 にじいろCAPは専門教育を受けたメンバーで構成される。年間に約350件の講習を行い、1999年の設立時の3倍に増えたという。重永代表理事は、具体的な行動プログラムを通して「子どもや保護者、地域全体で人権保護の啓発と暴力事件の防止が大切だ」と強調している。

 ◇ワークショックの申し込みなど、問い合わせはファクス=0942(39)7315。

=2007/12/07付 西日本新聞朝刊=