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米艦隊の香港寄港拒否問題 背景に海洋覇権争い (2/2ページ)
しかし米国防総省はゲーツ長官の帰国後、間もなくパトリオット売却を発表して中国の神経を逆なでした。中国の反発に理由はあるにせよ、悪天候を避けるための寄港すら拒むのは国際ルールに反する度を過ぎた対応だ。
実はほかにも理由があったとの指摘がある。中国軍の動向に精通する軍事評論家の平可夫氏によると、11月に入って中国の海・空軍は台湾海峡有事を想定した大規模な軍事演習を南シナ海から華南、華東の海空域で進めており、米艦隊に間近から偵察されるのを嫌ったため、という。
米ワシントン・タイムズ紙も、中国海軍の南シナ海での演習を入港拒否の理由と報じている。
すったもんだの末に米中の国防当局は3日、ワシントンでの定期協議で双方が「寄港拒否問題を今後提起しない」ことに合意した。ともに胸に一物秘めての虚々実々の攻防だけに、これ以上突っ込んで泥仕合になるのを避けたとみられる。
台湾総統選に向けて陳水扁総統は台湾独立志向をより鮮明にして、人口の8割強を占める本省人(日本統治時代から台湾に住む漢族とその子弟)の支持を集める作戦だ。
中台関係は緊迫し、米中のせめぎ合いはさらにめまぐるしくなる。今回の寄港拒否事件は台湾有事をめぐる米中の“前哨戦”の色合いが濃厚だ。
にこやかに右手で握手しながら左拳を固めて相手のすきをうかがっているのが、米中関係の現状だ。日本もぼやぼやしてはいられない。(編集委員 山本勲)