死刑執行を巡り、死刑囚の氏名や執行場所などが公式に明らかになることは、日本の死刑システムの特徴として内外から批判されてきた極端な閉鎖性から一歩脱却したことを意味する。究極の刑罰ではあるが、同時に行政が法律に従って実施する行為でもある。公開の流れは遅すぎたくらいだろう。
方針転換の直接のきっかけは、今年8月下旬の鳩山法相の就任だ。鳩山氏は死刑は必要と強調しつつ、「法相が絡まず執行が自動的に進む方法はないか」、「死刑囚の名前すら公表していない現状を続けるのか」などの発言で波紋を呼んできた。
「友人の友人はアルカイダ」をはじめ、同氏の発言は誤解を生みがちな面もあり、死刑に対する言及も疑問視する反応が少なくなかった。だが、「『自動化』はともかく、氏名公表には法改正するハードルがない」と前向きに考える法務省幹部もおり、今回の流れが形成されていったとみられる。
死刑に反対する立場からは「一部の情報公開で制度の安定化を進めるつもりではないか」と揶揄(やゆ)する向きもある。今のところ、執行の順番など、核心部分が開示される可能性は低い。だが、09年に始まる裁判員制度では、市民が死刑の可否を判断しなければならない事態が生じる。そう考えれば、制度の存廃を含めた幅広い議論のため、秘密主義のさらなる見直しが求められる。【坂本高志】
毎日新聞 2007年12月7日 11時51分 (最終更新時間 12月7日 12時38分)