法改正に伴い、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ総合施設「認定こども園」の設置が可能となって1年が過ぎた。少子化や共働き家庭の増加に伴い、多様化した子育てニーズに対応する新たな選択肢として期待を集めたが、設置に財政的な支援がないこともあって、導入が進んでいない。鳥取県内では申請の動きすらなく、県民の関心も今ひとつだ。現状を追った。
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友達と仲良く遊ぶ園児たち。子どもの豊かな成長を保障するため、教育と保育を一体的に提供する認定子ども園の理念はすばらしいが、問題点も多い(写真と本文は関係ありません)
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認定子ども園は、親の就労の有無にかかわらず利用でき、幼稚園と保育所の一体化によって、就学前の子どもに豊かな幼児教育と保育が提供できるとされる。しかし、保育所待機児童の解消や定員割れで苦しむ幼稚園の経営改善につなげようとする根本的な狙いもあり、「経済効率優先で、子どもの視点に立っていない」との批判も強い。
国は当初約千施設の認定を見込んで導入を呼びかけたが、今年八月一日現在、全国で百五件が認定されただけ。認定ゼロは鳥取県をはじめ、島根、京都、奈良、香川など十四府県に上り、全国的に導入は進んでいない。
メリットなし
鳥取県では、設置許可に必要な認定基準条例を昨年十二月県議会で策定。当初は鳥取市が導入に意欲を見せ、本年度からのスタートを目指して私立幼稚園にも協力を働きかけたが、賛同が得られず、見送られたまま。かつては頻繁に行われた説明会もなくなり、県民や保護者などからの設置要望も特にないという。
導入が進まない理由について、鳥取市児童家庭課は「制度内容が決まるまでは分からなかったが、施設整備への国の財政補助もなく、認可されても新たな運営補助金が出るわけでもない。私立幼稚園へ協力をよび掛けても賛同してもらえない」と半ばあきらめ顔。
私立幼稚園側も「各園が夕方までの預かり保育、土曜日や長期休暇中の保育、二歳児の受け入れなど努力しながら保育機能を充実させ、地域貢献もしている。新たに資金投入をし、制約を受けてまで転換するメリットはない」と言い切る。
米子市でも同様だ。「公立保育所はどこも定員超過の状態で、新たな施設整備や職員配置が必要となる認定こども園への転換は難しい。私立幼稚園などからも認定申請への動きはない」(同市児童家庭課)という。
すでに一元化
一方、鳥取市にはすでに、公立保育所と公立幼稚園を併設した幼保一元化施設の鹿野幼児センター「こじか園」があり、二〇一〇年度には河原幼稚園と河原保育園、八上保育園を統合した幼保一元化施設が開設される。
いずれも認定こども園としての申請は予定されておらず、「申請すれば認可されるだろうが、煩雑な事務手続き作業に労力を費やすだけ」と市担当者。国の推定では、実際には幼保一元化していながら認定こども園の認可を受けていないこうした施設が、全国に約千件あるとされる。
法案化にあたって国会の参考人ともなった帝京大学の村山祐一教授(保育学)は「すべての乳幼児が安心して幼稚園や保育所での生活が送れるよう現行基準を改善するなど、現場の実態を踏まえた検証が必要で、やるべきことはたくさんある。なぜ急いで制度化したのか疑問だ」と指摘している。